美容師は、髪の毛のカット、パーマ、カラーリング、セットなどヘアスタイリングを通じて、お客様の理想を叶えるお手伝いができる非常に魅力的で華やかな仕事であるといえるでしょう。
そのため、美容師といえば、「おしゃれでかっこいい」イメージが強く、美容室で働きたいという方も多いのではないでしょうか。
しかし、そんな輝いて見える美容師の仕事は、「収入が低い」「肉体的にも精神的にも大変な仕事の割には給料が高くない」というマイナスなイメージを持たれることもあります。
そんな美容師としてのキャリアを目指している方にとって、美容師の年収事情は気になる要素のひとつだと思います。
そこで本記事では、美容師の年収や給料の実態とその理由、美容師が年収アップする方法などについて解説します。
美容師の平均収入
美容師の年収は、社会全体の平均年収や他の職業と比較すると、実際のところどのようになっているのでしょうか。
美容師の平均月収と平均年収を確認してみます。
厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、雇用者数が10人以上の企業で働く美容師(理容師も含む)の平均月収(現金給与額)は26万7,500円、年間賞与その他特別給は9万1,400円でした。年収換算すると、330万1,400円です。
年代別の美容師(理容師も含む)の平均月収は、以下のとおりです。
業態 | 現金給付額(千円) | 年間賞与(千円) |
---|---|---|
理容・美容師 | 267.5 | 91.4 |
※引用元
e-stat 政府統計の総合窓口 令和4年賃金構造基本統計調査
美容師(理容師も含む)の平均月収の推移を年代別で比較してみると、40代前半〜40代後半が最も高い月収がもらえる一方で、10代〜20代はもらえる月収が低い傾向にあることがわかります。
年代 | 現金給付額(千円) | 所定内給付額(千円) | 年間賞与(千円) |
---|---|---|---|
〜19歳 | 185.2 | 182.9 | 6.6 |
20歳〜24歳 | 212.7 | 208.5 | 32.6 |
25歳〜29歳 | 269.4 | 259.0 | 47.0 |
30歳〜34歳 | 310.2 | 297.3 | 94.9 |
35歳〜39歳 | 309.7 | 300.1 | 149.2 |
40歳〜44歳 | 318.7 | 309.6 | 153.2 |
45歳〜49歳 | 321.9 | 314.9 | 179.3 |
50歳〜54歳 | 314.6 | 299.5 | 163.7 |
55歳〜59歳 | 244.1 | 232.1 | 229.7 |
※引用元
e-stat 政府統計の総合窓口 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
国税庁が発表した「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、日本人の平均年収は458万円でした。
手取り年収は、この金額から厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料、所得税などが引かれた金額となります。
そのため、データからみても、美容師の年収や月収の水準は一般的な職種よりも低いといわざるを得ないでしょう。
美容師の年収が低い理由
データでも明らかなとおり、美容師の給料は低いといえます。
しかし、美容学校で専門的な知識や技能を習得し、国家資格である「美容師免許」を取得しているにもかかわらず、美容師の給料はなぜ低いのでしょうか。
ここからは、美容師の給料が低くなる原因・理由について、いくつかご紹介していきます。
固定費が高い
美容師の給料が低いとされる大きな理由のひとつに、固定費が高いことが挙げられます。
固定費とは、事業を維持するうえで必要な経費のうち、売上の増減に関係なく常に一定で発生する変動しない経費のことです。
美容室を経営するには、以下のような多額の固定費がかかります。
- 店舗の賃貸料
- 設備機器のレンタルリース費用
- 水道光熱費
- 広告宣伝費
- 人件費
ドライヤーやパーマの機器を動かす電気代や、シャンプーで使用する水道代、Webサイトや雑誌の広告費などは、他業種と比較すると経営上削減することが難しい高額な固定費です。
その分の従業員の給料へのしわ寄せがあると考えられます。
価格競争が激化
近年、美容師の需要が増加するとともに、美容室の数も増加しています。
その結果、美容室間での競争が激しくなり、価格競争が起こりやすくなります。
客数が増えても、客単価が低くて売上が伸びない場合、固定費ではなく人件費をカットする必要が出てきます。
そのような生き残りをかけた戦略の安値競争が、美容師の給与水準を抑制していることにつながっていると考えられます。
修行期間が長い
美容師は修行期間が長く、アシスタントからスタイリストになるまでに時間がかかってしまいます。
美容師資格を取得しても、はじめはアシスタントとして働くことになります。
実際、一人前のスタイリストに昇格するまで、平均で3年、長ければ5年以上かかります。
アシスタントとして働く期間は、指名料などはなく、収入も低く抑えられています。
このように、技術力や経験によって給料が大きく変動する美容師業界独自のシステムが、収入の水準を引き下げていることは間違いないでしょう。
ボーナスが少ない
厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、美容師(理容師を含む)の年間賞与その他特別給与額は、平均9万1,400円となっています。
また、同発表の「毎月勤労統計調査」によると、令和4年度における日本の会社員の夏季ボーナス平均額は38万9,331円、冬季ボーナス平均額は39万2,975円でした。
多くの場合、ボーナスの平均額が基本給の1〜2カ月相当であることから考えても、美容師は月収だけでなく、賞与・ボーナスも少ないため、年収も上がりにくい傾向にあります。
年 | 夏季ボーナス | 冬季ボーナス |
---|---|---|
令和3年 | 38万268円 | 38万787円 |
令和4年 | 38万9,331円 | 39万2,975円 |
※引用元
冬季ボーナス:厚生労働省「毎月勤労統計調査」(令和5年2月分結果速報等)
夏季ボーナス:厚生労働省「毎月勤労統計調査」(令和4年9月分結果速報等)
役職・ランクによる年収の差
美容師の年収が安いといっても、すべての美容師が同じではありません。
美容師は、役職に就き、経験年数が増えてくると年収は変動します。
また、働く場所や規模によっても美容師の平均年収は異なります。
ここでは、ランクによる給料の差を見ていきましょう。
アシスタント
多くの場合、美容室に就職後は、アシスタントとして働きます。
アシスタント期間は、スタイリストのサポートや店舗の片付けなど補助業務を中心に担当し、接客や施術のスキルを学ぶ見習い期間となっています。
そのため、駆け出しとなるアシスタントの給料は低く、平均月収20万円前後とされています。
アシスタント担当期間と想定される、勤続年数0年〜4年の美容師・理容師の平均月収・年収と年間賞与額は以下のとおりです。
勤続年数 | 平均月収(千円) | 年間賞与(千円) | 平均年収(千円) |
---|---|---|---|
0年 | 206.4 | 2.5 | 2479.3 |
1年〜4年 | 210.4 | 42.0 | 2566.8 |
※引用元
e-stat 政府統計の総合窓口 令和4年賃金構造基本統計調査
※平均年収(千円)は、目安として表から計算したものです。
アシスタントは、お客様からの指名や専属担当などがなく、歩合制やボーナスがないことも多いため、給料が安くなっています。
ジュニアスタイリスト
ジュニアスタイリストは、アシスタントとスタイリストの中間に位置する役職です。
ジュニアスタイリストになると、基本的なカットやスタイリングを任せてもらえるようになります。
平均月収は店舗によっても異なりますが、アシスタントとスタイリストの中間の金額になるでしょう。
スタイリスト
店舗によって基準は異なりますが、すべての施術をひとりで対応できるようになれば、スタイリストとして認められます。
スタイリストの年収は250~300万円程度、月収は20~25万円程度が目安とされています。
ただし、スタイリストに昇格すると、指名料や役職手当をもらえることも多いため、実力や集客力次第で美容師それぞれの収入が大きく異なります。
トップスタイリスト
スタイリストのなかでも、経験年数、技術力、売上、顧客数など一定の条件を満たした美容師は、トップスタイリストになることがあります。
トップスタイリストになると、従業員のトレーニングやリーダーシップなどが求められますが、年収500万円以上、月収50万円以上も実現可能です。
店長
店長は、美容室における最高ランクの役職にあたります。
店長になると、お客様への施術だけでなく、従業員の教育指導や店舗の売上管理など、負担すべき仕事が増え、マネジメント能力が求められます。
そのため、平均年収・月収はスタイリストの平均よりも高く、店長の年収は350万円〜450万円程度、月収は30〜40万円程度となっています。
しかし、実際には、店長の年収は業績や店舗規模などによって大きく変動し、成功報酬も期待できます。
以上のように、美容師の年収・月収は、実績や経験年数、それに伴う役職・ランクによって変動します。
これまでみてきた数字はあくまでも一般的な傾向でありますが、店舗の規模や経営状況によって大きく異なるのが実情です。
美容師が収入を上げる7つの方法
美容師になりたいとは思っても、実際のところ、美容師の年収事情や将来性について不安に思う方もいるのではないでしょうか。
美容師が給料を上げるためには、どのような方法があり、どのようにアプローチすればいいのか。
そこで、給料アップを目指す美容師ができる7つのポイントをご紹介します。
キャリアアップする
美容室で働く美容師が給料を上げるためには、キャリアアップを目指すことが現実的です。
これまで見てきたとおり、美容師にはいくつかの役職・ランクがあり、それによって給料も上がる傾向があります。
そのため、スタイリストや店長などのより上位の役職を目指し、長く同じ店舗で働き続けると給与面にも反映されるでしょう。
スキルアップする
美容師としての施術スキルは当然ですが、接客やカウンセリングなどのコミュニケーションスキルも含めて、知識や技術を磨くといいでしょう。
高い技術に丁寧な接客を行うことで評判のいい美容師になれば、固定客や指名客の増加につながり、歩合制や指名料による年収アップにもつながります。
資格を取得する
美容師免許以外の新たな資格を取得することも、年収を上げる手段のひとつです。
資格を取得することで資格手当をもらえる場合もあり、仕事の幅も広がり、給料アップにつながります。
例えば、店舗内での衛生管理責任者である「管理美容師」やヘアカラーの専門知識や技術を身につけられる「ヘアカラリスト検定」などが挙げられます。
また、ネイルやマツエク、メイクなどの資格を取得しておけば、トータルビューティーサロンなどの職場の選択肢も増やすことができるため、新たな資格を取得することはおすすめです。
転職する
昇進・昇格に時間がかかるようであれば、年収を上げる手っ取り早い方法として「転職」があります。
現状の給料に満足できない場合、条件のいい美容室に転職することも効果的なひとつの手段です。
転職先を選ぶ際には、給与水準、定期的な昇給・昇格制度の有無、歩合制や指名制の還元率、資格手当の有無などさまざまな観点からよりよい条件の美容室を探すことが重要です。
フリーランスとして働く
フリーランス美容師として働くこともいい方法です。
フリーランス美容師とは、特定の美容室や企業に所属せずに、個人事業主として美容室と業務委託契約を締結して働く美容師のことです。
店舗を持たないため、少額の資金で独立でき、ランニングコストがかかりません。
また、特定の美容室から施術に必要な場所と設備を借りる「面貸し」や「シェアサロン」のスタイルで働くことが一般的ですが、働き方は多種多様です。
フリーランス美容師は、拘束時間が長い美容室の正社員とは異なり、営業時間にとらわれずに、ある程度自由な時間で働くことができるというメリットがあります。
時間を有効活用して、働いた分だけ収入に反映されやすいことが魅力的です。
しかし、その一方で、デメリットもあります。
固定給がある正社員と比較すると、収入が不安定になることがフリーランスのデメリットです。
予約が少ない場合や体調不良で働けない場合などは収入が大幅に下がってしまうリスクもあります。
独立する
自分で美容室を開業して独立する方法もあります。
集客力やブランディング能力、ビジネススキル、マネジメントスキルなどが求められますが、経営をうまく軌道に乗せられれば、年収アップが見込めます。
また、財務的な観点からみると、売上から経費を差し引いた金額が自分の給料となるため、店舗の売上が伸びれば、年収が大幅に上昇します。
しかし、フリーランス同様、売上が伸びなければ収入が減ってしまうリスクも想定されます。
セミナーや講習会を開催する
ある程度の技術や経験を積んで美容師としてのキャリアがある場合は、セミナーや講習会を開催して、収入を増やす方法もあります。
大きな会場を借りてオフラインで開催しなくても、オンラインで開催することで、会場のコストを削減しながら収入を得ることができます。
講師としてセミナーや講習会を開催するため、美容師に教えられるだけの十分な知識や技術、経験値が求められることが前提とはなりますが、場所にとらわれず開催でき、副業として収入アップが期待できます。
まとめ
今回は、美容師の年収や月収などの給与面や、年収を上げる方法についてご紹介してきました。
美容師の平均年収は、他の職種と比べてみても、確かに低い傾向にはありますが、勤務場所や企業規模、役職や地域などさまざまな条件によって、大きく変動するといえます。
スキルアップや資格取得など地道な努力をとおして、キャリアアップや転職、独立へつなげることで、年収アップが期待できます。
美容師としてどのように働き、どのくらいの収入を得たいかについて熟考し、自分に合った最善の選択をすることが重要です。
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