転職活動の時に提出する履歴書について、じっくり考えて書いていますか?
面接や職務経歴書はしっかり準備しても、実は履歴書はあまり考えないで書いている、という人も多いのではないでしょうか。
選考段階時には履歴書は見ないで職務経歴書だけで判断する人事もありますが、一方でしっかり選考の判断材料にしている会社も多いのです。
したがって、履歴書も自分の合格のための後押し材料にする必要があります。
そこでここでは、履歴書の中の「自己PR」に絞って、それをどのように書けば採用担当者が感心し転職に成功するのか、という作成方法を6ステップでご紹介します。
自己PRの鉄則
履歴書はA3かB4で1枚という書くスペースの少ない書類ですから、当然自己PR欄もそれほど大きくありません。
そこに書ける文字数はせいぜい300文字程度でしょう。
だからと言って力を入れないで書いたのでは、ほかの応募者もおそらく同じですから、そこに差はつきません。
しかし、しっかり書いた候補者がいた場合、その人と比較されて書類選考で落ちてしまう可能性もあります。
そういう意味では、履歴書の小さな自己PR欄でもしっかりと考えて書く必要があるのです。
そのための自己PRには以下の鉄則があります。
- 人と同じことを書いたのでは書類選考で落ちる
- 人と違う強みを書く
- 人と違ったように見える強みを書く
転職での選考は「その人物が優秀か」という絶対評価であると同時に、「ほかの応募者と比較して優秀か」という相対評価です。
採用担当者は非常に多くの数の履歴書を見ていますから、はっきり言ってどれも斜め読みです。
その中で、目を止め、しっかりと読ませることが重要です。
まず人とは違ったことを書く、違った強みを書くことが自己PRの鉄則なのです。
もしも同じようなことしか書けない場合でも、「違って見える」書き方の工夫が必要です。
と言っても、どのように人と違ったことを書けばよいのかイメージがわかない人も多いでしょう。
以下の6つのステップに沿って自己PRを考えましょう。
すでに書いている人もこのステップで磨き上げてください。
ステップ1 自分の強みを整理しPRするものを1つに絞る
自己PR欄は狭いです。ですから書けることはわずかですし、かといってぎっしり書いてしまうとそれもまた一瞬見ただけで採用担当者はうんざりしてしまい、読むことさえしてくれなくなります。ですから、書くことは自分の強みのうち最も訴求力のある1つに絞ることが重要です。
その「強み」が思いつかない場合は以下の4つの観点で自分の経歴と仕事を振り返りましょう。
1 サクセスアチーブメント
これは、「成し遂げた仕事の成果」という意味です。自分の経歴の中で、成功した仕事を思い出してください。そして、その成果を生み出すために、「どのような目標を立て」「どう取り組み」「どんな成果になったか」の3つで整理しましょう。
その時、特に重要なのは、採用担当者に「それは市場環境がよかったから」「周りに恵まれていたから」「会社が後押ししてくれたから」などように、「自分の力以外の要素によって成果が出た」と思われないようにすることです。
2 テクニカルスキル
あるいは、「職種や仕事内容によって得たスキルや知識」も強みになります。これをテクニカルスキルと言います。
その時のポイントは、応募した会社の求めているスキルと一致していることです。たとえば英語力を求めているのに、会計知識を強みだとしても相手には響きません。また、仮に資格をたくさん持っていても、その数は強みにはなりません。むしろ「資格コレクター」だと思われてしまい、逆効果です。大切なのは、なぜそれを取得し、どのように生かし、成果につなげたか、ということです。
3 コンセプチュアルスキル
これは「仕事の進め方や問題発生時の解決の仕方」という意味です。たとえば、「周囲を巻き込みながら仕事を進めていく事が得意」などもそれに含まれます。仮に資格やスキルなど形になっている強みがない場合は、この強みが自分にないか考えましょう。
4 ヒューマンスキル
これは「コミュニケーションやストレス耐性などの対人スキル」のことです。「明朗快活」や「元気があること」などもこれに入ります。しかし、転職希望者が書く強みの多くはこれですので、よほどその強みに説得力のあるストーリーがなければあまり書くことはおすすめしません。上記の1~3の全てで強みが思い当たらない場合のみ、これを選びましょう。
ステップ2 職種別にプラス評価される強みか確認する
自分の強みを絞り込んだら、それが応募している職種の仕事をする上で評価されるものかどうか判断しましょう。特に、職種によっては、採用担当者の方でネガティブな先入観を持っている可能性が大いにありますので、それを覆し、払しょくできるかどうかも1つの判断材料になります。具体的には以下のようなことです。
営業職
先入観:環境やタイミングに依存して成果が出ただけではないのか?そこから何も学んでいないのではないか?成果が出ただけで満足しているのではないか?
評価される強み:実際に挙げた実績とそれを挙げたプロセス、およびそれによって身に付けたり学んだりした能力
管理部門
先入観:視野が狭く自分の仕事だけにしか関心がないのではないか?
評価される強み:業務の幅広さと後進育成力
技術職
先入観:機械や実験道具だけを相手にしていてコミュニケーション力や協調性など、組織人スキルがないのでは?自分の関心だけで仕事をして会社全体のことを考えていないのではないか?
評価される強み:専門職にとどまらない組織や業績への貢献の意識、後進育成力
販売職
先入観:一匹狼で自分の売上を上げることしか考えていないのではないか?接客スキル以外に持っているものがないのではないか?
評価される強み:自分1人ではなくチームを運営し、総合力で勝負できるチームビルディング力と協調性、および接客以外の管理スキル
一般事務職、生産部門
先入観:言われたことだけをしてきたのではないか?自主的に動けないのではないか?組織人としての自覚がないのではないか?
評価される強み:組織人としての会社の業績に貢献するという自覚
ステップ3 自己PRに入れるべき情報を洗い出す
自己PRとは言ってみれば「自分という商品」を「採用担当者という顧客」に売り込む「販促コピー」です。ですから、その内容は独りよがりではなく、説得力を持っている必要があります。
それによって、相手が納得し、その強みを評価してくれれば、少なくとも書類選考は通過できます。そのためには、自分の強みに関する以下の情報を洗い出し、自己PRに入れ込みましょう。
成果を客観的な数値で提示する
どのような成果であっても、それを客観的な数字で示すことが最も重要です。営業職や販売職などは比較的簡単ですが、なかなか数字に現れない管理部門や開発部門、生産部門の成果は難しいかもしれません。
しかし、管理部門でも、たとえば全社の光熱費の削減額、従業員満足度の上昇率、生産効率の改善度合い、開発した機能が評価されたことでの受注数のアップ率、など何らかの「数字」はあるはずですから、それを探しましょう。
成果が出た根拠を示す
また採用担当者は成果の因果関係の有無に非常に敏感です。本当にその候補者が先頭に立ってもたらした成果なのか、たまたま市場環境がよかっただけの成果を自分の手柄にしているのではないか、と疑っています。ですから、その成果を出すために自分が直接関わって実行したことを明記しましょう。
応募先企業と職種にあった強みに変換する
さらに可能であれば、その強みを今回応募している企業と職種に合ったものに言い換えることも重要です。
たとえば、チームビルディングの能力があることが得意で、今回応募するのがルート営業であれば、「自分の成功事例を積極的に部内で共有し、またお互いの事例を共有する場の設置も働きかけて、部全体の業績アップに貢献したい」などです。
ステップ4 強みの羅列ではなく、起承転結で自己PR文を書く
自己PRは300字程度しか書けませんが、だからと言って、実績、スキルなどを羅列しても相手には響きません。
納得させ、感心させるためにはそこに起承転結のストーリーが必要です。そのためには、ここまでで洗い出した強みを以下の流れで整理し、文章にしてみましょう。
- 自己PRタイトル
- 仕事の概要
- 成果に至ったプロセス
- 成果
- 得た強み
- 企業に貢献できる事
これをたとえば文章にすると、以下のようになります。
- 「顧客の潜在ニーズをサーチし、成約につなげるソリューション提案営業が強み」(①自己PRタイトル)
- 入社以来5年間、中小規模の顧客を中心に、営業職に携わってきました。(②仕事の概要)
- 営業訪問時に心がけた点は、担当者からのヒアリングを表面的なことだけに終わらせず、相手先企業の戦略的な課題と結びつけて聞き出すことです。そしてその対策を自社製品の枠を超えて、自分なりに提案してきました。(③成果に至ったプロセス)
- その結果、多くの顧客から「○○さんが1番うちのニーズに合った提案をしてくれる」と契約をいただけました。それによって、毎年売上を前年比130%伸ばし、昨年度は社長賞をいただきました。(④成果)
- この積み重ねで得た「顧客の潜在ニーズに合致したソリューション提案」が私の強みです。(⑤得た強み)
- この強みを生かして、御社でも顧客との深いつながりを築き、業績貢献したいと思います。(⑥企業に貢献できる事)
ステップ5 自己PRを客観的に推敲する
以上が書けたら、採用担当者の目になって、自分の自己PR文を推敲しましょう。その時のポイントは以下の通りです。
誤字脱字がないか。読みやすいか。
まずこれは当たり前のことです。特に主語と述語が一致しているかはしっかり確認しましょう。
文字数は300字まで。表現は平易に
文章は「ですます調」にします。そして1文は最長50字程度にして、表現も分かりやすくしましょう。
誇大ではないか、抽象的ではないか
また強みをPRしたいあまりに、「主観的すぎる」「具体性が無い」「形容詞が多い」ということがありがちです。「頑張りました」「努力しました」「素晴らしい」などの言葉はできるだけ避けましょう。
「わかったようなこと」を書いていないか
また、相手先企業を理解していることを伝えようと「貴社の事業ドメインの点では・・・」「競合環境を考えると・・・」などを書く人がいますが、それは面接の場面では必要ですが、自己PR文に書くと「部外者が分かったようなことを書いている」とネガティブにとらえられてしまう危険性がありますので、避けましょう。
ステップ6 最後の確認。自己PRのキャリア別注意点
以上までできれば自己PRはかなりほかの応募者と差別化されたものに仕上がっているはずです。ただし、意外にやりがちな自己PRのキャリア別の注意点を最後に示しますので、それに当てはまっていないかを確認してください。
20代の自己PRでも仕事で得た強みを
就業経験が少ない第二新卒や、20代前半~中盤の転職の場合でも、大学生のサークルやアルバイトなどの経験を根拠にした自己PRはNGです。仕事で得たスキルや強みを書きましょう。
30代の自己PRでは強みを絞り込むこと
30代になるとそれなりに成果や実績を積んできていますので、そのために返って内容が散漫になるケースがあります。
それでは訴求力が出ませんから、強みは1つに絞ることが大切です。もしも絞り切れない場合は、すべての仕事に共通する取り組み方や考え方を書いてもよいでしょう。
40代の自己PRでもチャレンジ精神を前面に
40代の転職者はキャリアがある分、応募先企業からすれば今の能力の範囲でしか仕事をしないのではないか、と思われてしまいがちです。ですから、自分の得意分野だけではなく、新規性の高い業務へのチャレンジ意欲を示しましょう。
転職活動における書類作成は、転職エージェントのサポートを受けることもおすすめです。
参考:教育業界専門の転職エージェント「Education Career」
まとめ
いかがでしたか。
履歴書は職務経歴書ほど転職の採用選考には影響しませんが、しかしだからと言って0ではありません。
むしろ、ほかの応募者が力を入れていない分、差をつけるチャンスです。またここでしっかり考えておけば、職務経歴書を作成する場合や面接の準備でもそれが生きます。ですから上のステップに沿ってしっかりと考え、人事をうならせる自己PRにしましょう。
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