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SIer3年目でWeb系の自社開発企業へ移るのは、早すぎるとは言い切れない時期と考えられます。条件は2つです。業務の外で書いたコードを職務経歴書とGitHubで見せられること、そして求人が受託やSESを含まない自社開発かを、求人票の「変更の範囲」と面談で確かめることです。
一日が設計書と進捗報告で終わり、自分が関わったシステムを誰がどう使っているのか見えないまま、3年目を迎えた人に向けて書きます。同期がWeb系へ移り始め、今動くべきか、まだ早いのかで迷っている状況を前提にしています。
SIer3年目がWeb系・自社開発への転職を考える理由
3年目になっても資料と調整ばかりで、コードを書く時間が少ない
SIerの3年目は、詳細設計書やテスト仕様書を作り、協力会社の進捗を確かめる仕事が中心になりやすい立場です。実装を下流の会社に任せる体制では、手を動かす機会そのものが減ると考えられます。
職種を問わない厚生労働省の調査では、自己都合で前職を辞めた理由(3つまで回答)は「賃金が低かったから」25.5%、「会社の将来に不安を感じたから」25.2%、「満足のいく仕事内容でなかったから」24.7%の順でした。
コードを書けないという不満は、仕事内容への不満として、転職理由の上位に入る理由と重なります。
多重下請けの中では、役に立っている実感を持ちにくい
経済産業省の資料によると、情報サービス・ソフトウェア産業では元請と下請の両方を行う企業が半数を占め、下請のみの企業もおよそ4社に1社あります。元データは2010年の調査なので、今の比率とは違う可能性があります。
同じ資料は、下請企業の1人1時間あたりの労働生産性が3,719円で、元請企業の6,415円の6割程度にとどまると示しています。客先で働くSIerには、次のような制約もよくあります。
- 使える言語やライブラリが、顧客の社内標準で決まっている
- 客先のPCでは、外部のサイトや新しいツールを自由に使えない
- 小さな改善でも、顧客の承認を待たないと進められない
利用者から遠い階層で働くほど、自分の仕事の成果が見えにくくなる構造があると考えられます。
受託・保守運用の技術だけでは取り残されるという不安
経済産業省は2019年の調査で、2030年にはIT人材が約45万人不足すると試算しました(2018年は約22万人)。ただし、どの分野でも同じように人が足りないわけではありません。
受託開発や保守運用などの従来型IT人材から、AIなどの先端IT人材へ移る人が年1%にとどまる場合、2030年には従来型が約10万人余り、先端IT人材は約55万人足りなくなると試算されています。
受託の保守だけを続けることへの不安は、国の試算にも裏づけがあります。
SIerとWeb系自社開発の違い:技術・働き方・年収・安定性
技術スタックと開発スタイルの違い
下の表は一般的な傾向です。同じSIerやWeb系の中でも、会社によって大きく違います。
| 項目 | SIer(受託) | Web系自社開発 |
|---|---|---|
| 誰のために作るか | 発注元の顧客 | 自社サービスの利用者 |
| 進め方 | ウォーターフォールが中心になりやすい | 短い周期で改善を重ねることが多い |
| 技術の選び方 | 顧客の標準や過去の実績に合わせる | 自社のエンジニアが選ぶ |
| エンジニアの主な仕事 | 設計書・進捗管理・品質管理 | 実装・コードレビュー・運用の改善 |
| 成果の測り方 | 納期と仕様どおりの納品 | 利用者数や売上の変化 |
| 働く場所 | 客先常駐の場合もある | 自社オフィスやリモート |
Web系自社開発では、仕様どおりに作ったかよりも、作ったもので利用者の数字が動いたかで評価される場面が増えると考えられます。
年収は「SIerかWeb系か」より、職種と企業規模で変わる
厚生労働省の賃金統計に「SIer」「Web系」という区分はありません。職種と企業規模で見ると、次のような差があります。
| 職種・企業規模 | 平均年齢 | 月の給与 | 年間賞与 |
|---|---|---|---|
| ソフトウェア作成者(10人以上) | 37.1歳 | 39万800円 | 109万5,100円 |
| システムコンサルタント・設計者(10人以上) | 38.3歳 | 54万2,100円 | 238万5,200円 |
| ソフトウェア作成者(1,000人以上) | ― | 41万8,600円 | 138万5,900円 |
| ソフトウェア作成者(10〜99人) | ― | 36万600円 | 85万5,100円 |
SIerで上流工程を担う人は「設計者」に、Web系で実装を中心にする人は「ソフトウェア作成者」に近いという見方もできます。その場合、実装中心の仕事に移ると給与の水準が下がることも考えられます。
大手SIerから小さな自社開発企業へ移るなら、月給と賞与の両方が下がる組み合わせも想定しておく必要があります。
上場IT企業の平均年収からわかる幅
CareerBoost 年収データベースでは、情報・通信業の上場企業96社の平均年収の中央値は約791万円で、真ん中の半分は約682万〜923万円でした。これは有価証券報告書の平均年間給与です。エンジニアだけの数字ではなく、営業や管理部門も含んでいます。
同じ96社の平均年齢の中央値は38.7歳、平均勤続年数の中央値は9.2年です。気になる会社については、EDINETで有価証券報告書を開き、「従業員の状況」の欄を見ると自分で確かめられます。
3年目の自分の年収と比べるときは、平均年齢が30代後半の社員を含めた平均だという前提で読みます。
Web系に移って後悔しやすい場面と、SIerに戻る道
Web系へ転職したあとで後悔しやすいのは、次のような場面と考えられます。
- 速く作ることが求められ、設計書で品質を守ってきたSIerのやり方が通じない
- 事業が伸びず、評価や賞与が会社の業績に左右される
- 人数が少なく、インフラや問い合わせ対応まで担当が広がる
- 求人には自社開発とあったのに、実際は受託や客先常駐の仕事だった
SIerやユーザー企業の情報システム部門に戻る道もあり、上流工程の経験はそのときにも評価されると考えられます。最後の「仕事内容が求人と違った」という後悔は、入社前の確認で減らせます。
SIer3年目はWeb系転職で即戦力かポテンシャルか
3年目は「基礎のある若手」として見られやすい
3年目は、新卒向けのポテンシャル採用と、経験者向けの即戦力採用の境目にいると考えられます。Web系自社開発の中途採用では、経験年数より、今どんなコードを書けるかを見る会社が多いという見方もできます。
3年目の応募者が見られやすい点は次のとおりです。
- Git・テスト・ログの読み方など、開発の基本が身についているか
- 自分で調べて、小さなものを最後まで作り切れるか
- SIerで覚えた進め方を、チームに合わせて変えられるか
3年目は完成した即戦力かどうかより、手を動かした量と伸び方で判断される時期と考えられます。
要件定義・上流工程の経験が評価される場面
SIerで身につけた要件定義や顧客との調整は、Web系でも仕様を決めるときに使えます。とくに次のような仕事です。
- 企業向けSaaSで、顧客の業務を理解して機能を設計する
- 社内の営業やカスタマーサポートから届く要望を整理する
- 外部のシステムと連携するとき、相手と仕様を合意する
上流の経験は、それだけを語っても伝わりにくいので、「調整した結果、何が作られたか」とセットで話します。
3年目の転職は早いのか、遅いのか
3年目で動く利点は、SIerの進め方が身につき切る前で、Web系のやり方に切り替えやすいことだと考えられます。一方で、業務でほとんどコードを書いていない人は、書類で開発の力を示す材料が足りず、準備の時間が必要です。
- 業務の外で作ったものを人に見せられる → 応募を始めてよい段階
- 見せられるものがまだ無い → SIerで働きながら、まず小さく作る
- 年収を下げたくない → 企業規模と職種で応募先を絞る
早いか遅いかは年数ではなく、見せられるコードがあるかどうかで決まると考えられます。
求人が本当に自社開発か見分ける方法(受託・SESが混じっていないか)
求人票の「業務・就業場所の変更の範囲」を読む
2024年4月1日から、求人企業は募集のときに「従事すべき業務の変更の範囲」と「就業場所の変更の範囲」を明示しなければならなくなりました。厚生労働省は、この範囲には将来の配置転換の見込みも含まれると説明しています。
自社開発の求人でも、就業場所の範囲に「顧客先」が入っていれば、客先で働く可能性を会社が残していると読めます。労働契約を結ぶときも労働条件通知書に同じ範囲を書くことが義務になったので、内定後に書面でもう一度確かめられます。
「自社サービス開発」と書かれていても、業務の変更の範囲に「受託開発」や「顧客先でのシステム開発」が入っている場合があります。入社直後だけでなく、将来の配属で受託やSESに回る余地があるかどうかを、求人票と労働条件通知書の両方で確かめてください。
請負・準委任・派遣の違いを押さえる
民法では、請負は仕事の完成を約束し、その結果に報酬を払う契約です(第632条)。準委任は、法律行為でない事務の委託に委任の規定を当てはめるものです(第656条)。
派遣と請負の違いは、注文主と働く人の間に指揮命令の関係が生じるかどうかで判断されます。面接で次の言葉が出たら、意味を確かめます。
- 「受託」「請負」:顧客から仕事の完成を引き受ける形で、自社サービスではない
- 「準委任」「SES」:作業や時間に報酬が払われる形で、客先常駐になりやすいと考えられる
- 「派遣」:派遣先の指揮命令を受けて働く形
「一部は受託もあります」と言われたら、売上のうち自社サービスと受託の比率まで聞くと、実態をつかめます。
面談で何を聞くか:良い答えと悪い答え
判断の決め手は、求人票の言葉よりも「誰が、どのサービスの、どの機能を作っているか」に面接官が答えられるかどうかです。
- 自社サービスの名前と、エンジニアが担当している機能を具体的に答えられる
- 開発チームの人数や構成、使っている言語を説明できる
- 就業場所の変更の範囲が、自社の事業所やリモートに限られている
- 「案件によります」「配属先によります」で担当業務の説明が終わる
- 研修のあとは「現場」に出ると説明される
- 会社のサイトに、自社サービスの情報がほとんど載っていない
- 求人票の「業務の変更の範囲」に、受託や顧客先の業務が入っていない
- 「就業場所の変更の範囲」に顧客先が入っていない
- 面接官が自社サービスの名前を具体的に挙げた
- 配属予定のチームのエンジニアと話す機会があった
- 労働条件通知書の範囲が求人票と同じになっている
コードを書いていないSIer3年目の職務経歴書と書類選考
業務の中で「技術を使って判断した場面」を拾い出す
設計書やテストが中心の仕事でも、技術を使って判断した場面はあるはずです。たとえば次のような場面です。
- SQLを書いて、障害の原因になったデータを特定した
- マクロやシェルで手作業を自動化した
- 性能が落ちた原因を、ログから切り分けた
- 方式設計で、ライブラリや構成を比べて選んだ
「業務ではコードを書いていない」と書くより、技術を使って問題を解いた場面を具体的に書く方が、開発の力は伝わります。
職務経歴書の書き方を直す
担当した作業を並べるだけでは、Web系の書類選考では開発の力が見えません。次の例文はどちらも架空のものです。
職務経歴書は「何を調べ、何を判断し、何が変わったか」の順で書きます。
GitHubとポートフォリオで実装力を補う
業務でコードを書いていない3年目にとって、GitHubは、職務経歴書では見せられない実装の力を示す場所になります。作った量より、自分の判断を説明できるかが見られます。
作ったものについては、面接で次のような質問をされると考えておきます。
- なぜその言語と構成を選んだのか
- 一番苦労したところと、その解決方法
- 利用者が増えたら、どこが詰まりそうか
- テストをどう書いたか
見栄えのよい大作より、テストとREADMEがそろった小さなアプリを仕上げる方が、3年目には説明しやすい材料になります。
Web系自社開発の面接対策と3年目の転職活動の進め方
Web系の面接で聞かれること
Web系自社開発の面接では、次のような質問に備えておくと準備しやすくなります。
- 今のプロジェクトのシステム構成を、図に描いて説明する
- 設計でうまくいったこと、失敗したこと
- その場で出される設計の問題(例:短縮URLサービスをどう作るか)
- 言語やデータベースの基本についての一問一答
- SIerからWeb系に移る理由
転職理由は、SIerへの不満で終わらせず、自社開発で何を作りたいかにつなげて話します。
コーディングテストやその場でのコーディングに備える
書類選考のあとに、コーディングテストやその場でコードを書く面接を置く会社があります。練習サイトで基本のアルゴリズム問題を解き、時間を区切って書く練習をしておきます。
- 配列・文字列・ハッシュの基本的な操作
- 書いたコードの計算量を言葉で説明すること
- 考えていることを口に出しながら書くこと
その場でのコーディングでは、正解にたどり着くことと同じくらい、考え方を言葉で伝えられるかが見られると考えられます。
応募から内定までの順番
準備にかかる期間は、作ったものがあるかどうかで大きく変わります。働きながら進めれば、収入を保ったまま会社を選べます。
業務の外で小さなアプリを作り、GitHubで公開する
技術を使って判断した場面と、作ったものを合わせて書く
変更の範囲と事業内容を見て、受託やSESが混じる求人を外す
志望度が低めの会社から受け、面接の質問に慣れる
労働条件通知書で、業務と就業場所の変更の範囲を見る
内定と条件が書面で確定してから、今の会社に伝える
今の会社に退職を伝えるのは、条件が書面で確定してからにします。
転職サービスの選び方と、明光キャリアパートナーズが合う人
Web系自社開発の求人は、会社の採用ページ、エンジニア向けの転職サイト、転職エージェントなどから探せます。エージェントは求人を紹介してもらう役として使い、自社開発かどうかの最終確認は自分の目で行います。
明光キャリアパートナーズは、明光ネットワークジャパンのグループ会社が運営する、20〜30代のエンジニア経験者向けの転職支援です。大手からスタートアップまで幅広い会社の紹介実績があり、経験・希望・価値観に沿った業種や会社を提案し、履歴書や面接対策まで支援します。
合う人
– 20〜30代で、SIerで開発や設計に関わってきたエンジニア経験者
– 大手とスタートアップの両方を比べて決めたい人
– 職務経歴書や面接対策の支援を受けながら進めたい人
合わない人
– エンジニアとしての実務経験が無い人(対象外)→ 職業訓練や、未経験者向けの支援で基礎を固めてから応募する
– 40代以上の人(対象外)→ 年齢層の合う転職サービスを使うか、企業の採用ページから直接応募する
SIer3年目がWeb系自社開発への転職を決める前に
社内異動やAI活用スタートアップと比べる
IPAの調査では、DXを進める人材が「大幅に不足している」と答えた企業が62.1%でした。一方、社員の学び直しに取り組む日本企業は19.2%で、米国企業の8割弱を大きく下回っています。
先端以外のIT領域で働く人のうち、学んだ先端スキルを社内で活かす機会が「ある」と答えた人は、ここ3年で約26%から約37%に増えました。転職の前に、次の道とも比べておきます。
- 社内のDX推進部門や、自社サービスを作る部署への異動を申し出る
- AIを使った事業を始めたスタートアップに入る
- ユーザー企業の情報システム部門で、システムの内製化に関わる
「SIerを辞めるかどうか」ではなく「手を動かせる場所に移れるかどうか」で考えると、社内異動も選択肢に入ります。
応募する前に決めておくこと
- 3年目の評価は、見せられるコードがあるかどうかで分かれる
- 自社開発かどうかは、「変更の範囲」と面談での答えで確かめる
- 年収は職種と企業規模で比べ、上がる前提では決めない
SIerでの3年間を捨てるのではなく、手を動かした証拠を足して持っていくと考えれば、次にやることが決まります。
執筆・編集:CareerBoost 編集部(運営:合同会社Radineer)/更新日:2026年10月15日




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