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SESで基本設計の経験がなくても、詳細設計やテストで「基本設計書をどう読み、何を確認して決めたか」を説明できれば、SIerへの転職は狙えると考えられます。ただし転職先がさらに下請けの立場なら、入社後も基本設計に届かない恐れがあります。求人票の「業務の変更の範囲」と面接での質問で、上流を任せる会社かを確かめてから応募先を絞ってください。
SESの現場で詳細設計やテストは任されても、基本設計の打ち合わせには呼ばれない人がいます。SIerの求人に並ぶ「基本設計経験」の文字を見て、応募してよいのか迷っている人に向けて、判断の基準と準備をまとめます。
SESで基本設計の経験なしでもSIerへ転職できるか
分かれ目は「基本設計をしたか」より説明の深さ
SIerの求人には、基本設計の経験を必須に書くものもあれば、歓迎要件に置くものもあります。必須か歓迎かで、経験なしの人が応募できる範囲は大きく変わります。
経験なしの人が評価されるのは、詳細設計やテストで仕様の矛盾に気づき、上流の担当者にどう確認したかを話せる場面と考えられます。SIerが見たいのは「基本設計をしたか」より「基本設計書を読んで何を判断したか」だという見方ができます。
経験なしで応募できるSIer求人の数は自分で数える
基本設計の経験がない人を受け入れるSIer求人の割合は、公的な統計では確かめられません。そこで、使う求人サイトで自分が応募できる求人の数を先に数えます。
- 「SIer」「システムエンジニア」で検索し、総件数を控える
- そのうち必須要件に「基本設計」「要件定義」が入っている件数を数える
- 歓迎要件にだけ入っている件数と、「詳細設計」「製造・テスト」の経験で応募できる件数を分ける
「必須に基本設計がない求人」の件数が、あなたの応募先として実際に残っている数です。件数が少なければ、先に今のSESの現場で基本設計に触れる経験を積むべきかの判断材料になります。
転職理由の上位は賃金・将来不安・仕事内容
厚生労働省の調査では、自己都合で前職を辞めた理由の上位は「賃金が低かったから」25.5%、「会社の将来に不安を感じたから」25.2%、「満足のいく仕事内容でなかったから」24.7%でした。
SESで基本設計に触れられない悩みは、このうち「仕事内容」と「将来不安」の両方にまたがります。転職の軸を「基本設計を任される環境」と一文で決めておくと、年収だけで応募先を選んで同じ悩みを繰り返す事態を避けやすくなります。
SESで基本設計を経験できない理由と、続けた場合の年収・将来
SESの契約の形が担当範囲を決めている
SESは準委任契約の形で結ばれるのが一般的とされます。民法上、請負は仕事の完成を約束する契約で、準委任は法律行為でない事務を任せる契約です。
準委任でも、発注者と働く人の間に指揮命令関係があれば、形式を問わず労働者派遣事業に当たると厚生労働省は説明しています。発注者から直接指示を受けている場合は偽装請負の可能性が高いとされます。
- 客先や元請のSIerが作った基本設計書を受け取り、その範囲で作業する立場になりやすい
- 要件や設計の判断は、発注者と契約する側が持つ
- SES側の人に、客先と合意する決定権を渡しにくい
SESで基本設計に触れられないのは本人の能力より、契約上の位置で担当範囲が決まっている面が大きいと考えられます。
基本設計は「何を作るか」を決めて客先と合意する工程
基本設計は、要件定義で決まったことを画面・帳票・データ・外部連携などの形に落とし、発注者と合意する工程です。詳細設計は、その合意を前提にシステム内部の作りを決める工程です。
- 画面の項目と遷移、入力チェックの方針
- 帳票やデータの項目と持ち方
- 他システムとの連携の方式とタイミング
- 性能や権限など、機能以外の条件
基本設計は「客先と合意した内容に責任を持つ」工程なので、任されるかどうかが役割と給与の分かれ目になりやすいと考えられます。
下流だけを続けた場合を、年収と人材需給の数字で見る
賃金構造基本統計調査では、「ソフトウェア作成者」と「システムコンサルタント・設計者」の職種間で給与に差があり、企業規模によっても差があります。
| 職種(10人以上の企業・男女計) | 平均年齢 | 勤続年数 | 月の給与(きまって支給する額) | 年間賞与など |
|---|---|---|---|---|
| システムコンサルタント・設計者 | 38.3歳 | 11.9年 | 54万2,100円 | 238万5,200円 |
| ソフトウェア作成者 | 37.1歳 | 9.9年 | 39万800円 | 109万5,100円 |
| ソフトウェア作成者(1,000人以上の企業) | ― | ― | 41万8,600円 | 138万5,900円 |
| ソフトウェア作成者(10〜99人の企業) | ― | ― | 36万600円 | 85万5,100円 |
この表は職種の分類と企業規模で比べた数字で、「基本設計の経験の有無」で比べたものではありません。平均年齢や勤続年数も違うため、基本設計を覚えればこの差がそのまま埋まるとは読まないでください。
経済産業省は2019年の試算で、2030年にIT人材が約45万人不足するとしました。一方で、従来型から先端IT人材への転換が年1%にとどまれば、受託開発・保守運用などの従来型は約10万人の供給過剰になるとしています。
人が足りない業界でも、決められた範囲だけを作る役割は余る側に回りうる、という見方ができます。
SESとSIerの違いと、基本設計を任せる転職先の見分け方
仕事内容・責任・働き方の違い
SESとSIerの違いは、会社名より「誰と契約し、何に責任を持つか」で見ると整理しやすくなります。次の表は一般的な傾向で、会社によって異なります。
| 比べる点 | SES(準委任で客先常駐の場合) | SIer(発注者から直接受ける場合) |
|---|---|---|
| 契約の相手 | 客先や元請のSIer | 発注者 |
| 責任を持つもの | 作業の遂行 | 契約により成果物の完成まで |
| 担当しやすい工程 | 詳細設計・製造・テスト | 要件定義・基本設計から運用まで |
| 求められやすい力 | 実装とテストの速さ・正確さ | 客先との合意づくり、見積もり、取りまとめ |
| 働く場所 | 案件ごとに客先が変わりうる | 自社か発注者先(会社による) |
SIerに移って増えるのは「作る量」ではなく「決めて合意する量」だと考えておくと、面接での答え方が定まります。
SIerでも二次請け・三次請けなら下流に回りうる
経済産業省の資料によると、情報サービス・ソフトウェア産業では元請と下請の両方を行う企業が半数を占め、下請のみの企業もおよそ4社に1社あります(2010年のアンケート)。
同じ資料は、下請企業の労働生産性は1人1時間あたり3,719円で、元請(6,415円)の6割程度にとどまるとしたIPAの2008年調査を引いています。「SIer」という名前だけでは、転職後に基本設計を任される立場かどうかは分かりません。
求人票の「変更の範囲」と面接の答えで見分ける
2024年4月から、求人の募集時に「従事すべき業務の変更の範囲」と「就業場所の変更の範囲」を明示することが義務になりました。この範囲は雇い入れ直後だけでなく、将来の配置転換の見込みも含みます。
労働契約を結ぶときの労働条件通知書にも、この変更の範囲の明示が義務づけられました。求人広告では虚偽や誤解を生む表示が禁じられ、内容を正確で最新に保つ義務もあります。
- 業務内容に「要件定義・基本設計から担当」とあり、入社後に担当する工程の例が書かれている
- 発注者から直接受ける案件について聞くと、業種や案件の中身で答えが返ってくる
- 業務の変更の範囲について、上流工程へ配置する見込みを口頭でも説明してくれる
- 勤務地が「顧客先」だけで、自社で設計する案件の説明がない
- 「上流も経験できます」と言うが、配属先の契約形態を聞くと答えがあいまい
- 業務内容が「システム開発全般」だけで、担当工程が書かれていない
求人票と労働条件通知書の「業務の変更の範囲」を見比べ、基本設計が含まれるかを書面で確かめてください。
SESの現場で基本設計に近づく行動と、SIer転職のタイミング
詳細設計の段階で、基本設計への質問を記録に残す
基本設計の経験がなくても、受け取った基本設計書の矛盾や抜けを見つけて確認した経験は、上流に近い仕事です。質問した内容と、その結果どう仕様が決まったかを記録しておくと、そのまま職務経歴書の材料になります。
- 基本設計書のどの項目に疑問を持ったか
- 誰に、どんな選択肢を添えて確認したか
- 決まった仕様と、詳細設計やテストへの影響
基本設計の作業に入れてもらう頼み方
客先から直接指示を受ける形は偽装請負の可能性が高いとされるため、相談は自社の営業や責任者を通します。そのうえで、次の順で上流寄りの作業に近づく進め方があります。
今の契約か次の案件で、上流寄りの作業ができるかを確認してもらう
書く側ではなく読む側として、指摘を出す役を担う
仕様変更の小さな範囲で、基本設計書の修正案を書く
議事録係として、客先と合意する場に入る
自分が関わった範囲と、合意された結果を残す
「作成者」でなくても、レビュー・修正案・議事録で基本設計に関わった事実は面接で話せる経験になります。
実績がそろうまで待つか、今動くかの判断
待つか動くかは、今のSESの現場で基本設計に触れられる見込みと、応募できるSIer求人の残り数で決まると考えられます。
- 次の契約更新までに、基本設計書のレビューか修正に入れる見込みがある
- 自社の営業が、上流寄りの案件を探すと約束している
- 必須要件に基本設計がないSIer求人が、希望の地域や業種に複数ある
- 基本設計書への質問と、その結果を具体例つきで複数話せる
- 今の案件の契約期間と、退職の申し出の時期を確認した
上の2つが当てはまらず、下の3つが当てはまるなら、待つより動く方が基本設計に近づく道と考えられます。今の現場で上流に関われる見込みがないなら、実績がそろうのを待つ間に応募先が減っていく点も計算に入れてください。
基本設計の経験なしで通すSIer転職の書類・面接と、SESの退場時期
職務経歴書は担当工程より「判断した中身」を書く
工程名だけを並べると、基本設計の経験がないことがかえって目立ちます。仕様の確認や設計書の修正案など、上流に触れた行動を具体的に書きます。
「基本設計をしていない」ではなく「基本設計書を読み、確認し、修正案を出した」と書き換えるだけで、上流との距離が伝わります。
面接では「なぜSIerで基本設計をしたいか」を契約の話で答える
面接でよく聞かれるのは「なぜSESからSIerへ移りたいのか」「基本設計の経験がない点をどう補うのか」という問いと考えられます。
- 転職理由: 準委任の立場では仕様を決める側に回れないため、発注者と合意する工程に責任を持ちたい
- 経験の補い方: 基本設計書のレビュー・質問票・修正案で上流に触れた具体例
- 入社後の姿: 最初はレビューと議事録から入り、基本設計の担当範囲を広げたい
前の会社への不満でなく「契約上の立場を変えたい」と説明すると、SESを否定せずに転職理由を伝えられます。
案件途中の退場・退職・入社の時期を合わせる
SESには自社と客先の間の契約期間があり、途中で抜けると自社が後任を手配する必要があります。退職を申し出る前に、就業規則の定めと案件の契約更新の時期を確かめます。
内定先に入社日を約束してから、今の案件の契約期間を確かめる順番は避けてください。契約更新と引き継ぎの時期が入社日と重なると退場の調整がつかず、入社日をずらす交渉が必要になります。
面接の段階で今の案件の契約更新時期を伝え、入社日の幅を相談しておくと、退場と入社の時期を合わせやすくなります。
SESからのSIer転職の進め方と、基本設計を任されるまで
年代ごとに見られる点と、SIerの年収水準
SIerが年代ごとに求める経験を示す公的な統計はありません。20代は基本設計を覚える姿勢、30代はSESで担当したプロジェクトの規模とチーム内の役割を見られやすい、という見方ができます。
CareerBoost 年収データベースで、上場企業826社のうち情報・通信業96社を見ると次のとおりです。
- 平均年収の中央値: 約791万円(真ん中の半分は約682万〜923万円)
- 平均年齢の中央値: 38.7歳、平均勤続年数の中央値: 9.2年
これは有価証券報告書に載っている平均年間給与で、エンジニアだけでなく全職種を合わせた数字です。上場SIerの年収は応募先を比べる物差しとして使い、前の表の職種別の数字とは分けて読んでください。
入社後に基本設計を任されるまでの道筋は面接で聞く
経験なしで入社した人が、どのくらいの期間とどんな教育で基本設計を任されるかを示す公的なデータはありません。会社ごとに違うため、面接の逆質問で確かめます。
- 基本設計の経験なしで入社した人は、最初の案件でどの工程を担当したか
- 基本設計書のレビューや作成に入るまで、どんな育成の段取りがあるか
- 上流を任される前に辞めた人はいたか、その理由は何だったか
IPAの調査では、従業員の学び直しに取り組む日本企業は19.2%にとどまりました。育てる仕組みを持つ会社は多数派ではないと考え、育成の段取りを具体的に答えられるかで転職先を見分けてください。
転職支援サービスが合う人・合わない人
応募先の見分けや逆質問の準備を一人で進めにくいときは、転職支援サービスを使う進め方があります。明光キャリアパートナーズは、明光ネットワークジャパンのグループ会社が運営する、20〜30代のエンジニア経験者向けの転職支援です。
- 大手からスタートアップまで幅広い会社の紹介実績がある
- 経験・希望・価値観に沿った業種や会社を提案する
- 履歴書や面接対策まで支援する
合う人と合わない人は次のとおりです。
- 合う人: 20〜30代で、SESで詳細設計・製造・テストを経験し、基本設計を任せるSIerを紹介と面接対策つきで探したい人
- 合う人: 職務経歴書の「基本設計なし」の書き方や、逆質問の準備に第三者の目を入れたい人
- 合わない人: エンジニア未経験の人。先に開発経験を積める求人や職業訓練から始める進め方があります
- 合わない人: 40代以上の人。このサービスの対象外なので、年代を限らない転職支援を使うか、求人サイトで「必須に基本設計がない求人」を数える方法で進めてください
SESで開発経験がある20〜30代なら、応募先の見分けと面接対策をまとめて相談できます。
SESから基本設計の経験なしでSIerへ転職するための次の一手
今週から手をつける準備
基本設計の経験なしでSIerへ転職するなら、求人の数を数えることと、上流に触れた経験を記録することを同時に始めます。数える・記録する・確かめるの3つを並行させると、待つか動くかを事実で判断できます。
- 求人サイトで、必須要件に基本設計がないSIer求人を数える
- 今のSESの現場で、基本設計書への質問と結果を記録する
- 気になるSIerの求人票で「業務の変更の範囲」を確かめる
応募先に迷ったときの軸
迷ったときは年収の額より、「入社後に基本設計を任される道筋を、書面と面接で確かめられたか」で比べると考えられます。
- 発注者から直接受ける案件で、基本設計を担当する見込みがあるか
- 求人票と労働条件通知書の「業務の変更の範囲」が面接での説明と一致しているか
- 経験なしの入社者を基本設計まで育てた段取りを答えられるか
SESから移る目的は会社名を変えることではなく、基本設計を決める側に回ることだと、最後まで軸を動かさないでください。
執筆・編集:CareerBoost 編集部(運営:合同会社Radineer)/更新日:2026年10月15日




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