理学療法士はリハビリのスペシャリストであり、近年資格取得者が増えてきた医療系資格です。
理学療法士を志望する人が増えるなか気になるのは、理学療法士になることでどれくらい収入を得ることができるかです。
資格取得に専門学校など通う時間を必要とするため、給与が低いとモチベーションの維持も難しいですよね。
そこで今回は理学療法士になることで得られる収入と、収入の増やし方について紹介します。
理学療法士の年収はいくら?
出典:https://midori-hp.or.jp/rehabilitation-blog/web20220923/
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、理学療法士の平均年収は以下の通りとなります。
また、比較対象として全産業の平均年収も参考として記載します。
毎月の支給額 (固定給):円 |
年間賞与など 特別賞与額:円 |
平均年齢:歳 | |
理学療法士 | 300,700 | 698,400 | 34.7 |
全産業 | 311,800 | 884,500 | 43.7 |
つまり理学療法士の平均年収は約431万円で、全産業の平均年収は約463万円となります。
このことから理学療法士の平均年収は全産業よりも少し少ない事が分かります。
毎月の収入は両者とも大した差はありませんが、特別賞与は約20万円と大きく異なります。
特別賞与の差が年収の差に出ていることが分かります。
理学療法士の年収は男女差があるのか
理学療法士の平均年収は分かりましたが、そこで気になるのは男女差が存在するかです。
同じ職務を行うのに男女差があるとがっかりするものです。
そこで男女での平均年収を比較してみましょう。
平均年齢:歳 | 毎月の支給額 男:円 |
毎月の支給額 女:円 |
特別賞与等 男:円 |
特別賞与等 女:円 |
20~24 | 249,200 | 254,600 | 290,700 | 358,500 |
25~29 | 277,200 | 266,600 | 649,200 | 666,200 |
30~34 | 305,100 | 277,200 | 731,600 | 658,000 |
35~39 | 333,200 | 298,100 | 819,900 | 655,700 |
40~44 | 362,500 | 312,600 | 835,500 | 943,000 |
45~49 | 375,200 | 328,700 | 926,800 | 927,500 |
50~54 | 343,900 | 348,700 | 910,700 | 1,070,100 |
55~59 | 395,000 | 380,700 | 948,100 | 1,147,900 |
60~64 | 343,700 | 260,800 | 720,600 | 541,500 |
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』
年代別で見てみると、理学療法士は年功序列の傾向にあることが分かります。
もらえる収入面では50代がピークです。
男女での大きな違いは、男性は年齢が上がるにつれて収入の上り幅が大きい一方、女性はどちらかというと緩やかな傾向にあります。
しかし、初任給に該当する20~24歳に限っては、女性の方が収入がよいです。
ほかの医療・福祉と比較するとどうなるの
理学療法士は医療・福祉事業に該当しますが、ほかの医療・福祉系の職種の年収がいくらか気になりませんか。
そこで何職種かピックアップして、理学療法士の年収と比較していきます。
職種 | 年収:円 |
薬剤師 | 5,830,000 |
診療放射線技師 | 5,440,000 |
臨床検査技師 | 5,090,000 |
看護師 | 5,080,000 |
理学療法士 | 4,310,000 |
介護福祉士 | 3,630,000 |
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』
表にしてみると、理学療法士の年収は医療・福祉事業の中ではあまり収入が高い方とは言えません。
理学療法士は福祉施設でも活躍するため、同じ福祉施設でも活躍する看護師と介護福祉士とで比べてみましょう。
そうすると、ちょうど中間の収入を得ていることが分かります。
しかし、この両者と理学療法士には一つ、労働する時間帯に違いがあります。
理学療法士には基本的に夜勤は存在しません。
夜勤がない点で考えると、収入としては高いといえます。
一見すると収入は低く感じられますが、夜勤がないことを考慮して考えるべきでしょう。
基本給以外の福利厚生も要チェック
制服貸与などの身だしなみに関する補助のほか、住宅手当や通勤手当など基本給以外の手当等の有無は重要です。
とくに医療・福祉関係では清潔な身だしなみをする必要があるため、清潔さを保つための補助がないのは厳しいです。
その他キャリアアップ制度の充実も給与面と同様に大事であり、手当も含む福利厚生の充実は細部までをしっかりと把握しておく必要があります。
理学療法士は将来的に給与があがるか
理学療法士になりたい人は、年々増加傾向にあり、理学療法士の数も増えてきました。
そのため、理学療法士自体の数は足りている状態となり、いずれ職の奪い合いになる可能性もあります。
また、人が足りているということで給与をあげてまで人材確保をする必要もありません。
このことから給与自体も大幅にアップするとは言えなくなっています。
それだけではなく、理学療法士の診療報酬は時間単位で点数が振られており、8時間労働では24単位が限界です。
リハビリの種類によって単位数の上限があり、上限を超えてしまうと指導の対象となるため避けなくてはいけません。
さらに、経験やスキルによって診療報酬があがるわけでもない点も、給与に対する不満となります。
市場への供給量の多さが、給与アップの妨げともいえるでしょう。
理学療法士収入をあげるためには
出典:https://ksmcs.jp/krh/news/reha-newface2022/
先ほども述べたように、理学療法士になりたい人は増加傾向にあり、需要量を上回っている状態です。
そのため給与の伸び率もあまり期待が持てません。
この状況を受け入れるか、収入を増やしたいかは人それぞれです。
ここでは収入を増やしたい人に向けて、収入を増やすにはどうすればよいのかをみていきます。
今働いている場所で昇進する
現状働いている場所にもよりますが、スキルアップや昇進、昇格などによって給与をアップする方法があります。
病院の場合はチーフなどの管理職になることで手当を増額でき、結果として収入アップにつながります。
しかし、管理職に就くことは簡単な事ではありません。
技術や知識だけでなく、部下を管理するマネジメント能力も求められます。
また、勤務場所によって昇進や昇格に規定があるため、勤め先で昇進基準などを確認しましょう。
別の資格も積極的に取得する
理学療法士以外の資格を取得することでスキルアップができ、その結果給与アップへとつながることもあります。
ここでは、理学療法士としてスキルアップが見込める資格を2つ紹介します。
認定理学療法士
認定理学療法士は、専門性の高い知識を身につけるほか、理学療法の発展に貢献できるような研究能力が求められる資格です。
日本理学療法士協会により、7つの専門分野が設けられ、そのうち1つ以上の専門分野を選択し、選択した分野のスペシャリストとなれる資格です。
専門理学療法士
専門理学療法士は、専門分野の知識を深めた人物が取得できる資格となり、認定理学療法士同様に7つの専門分野から1つ以上を選択することが求められます。
なお、専門理学療法士は認定理学療法士の資格取得者が次に目指す資格となります。
ほかの職種の資格を取得する
自身の理学療法士としての仕事の幅を広げたいのなら、ほかの職種の資格を取得するのもおすすめです。
特に理学療法士は介護施設での需要が増えてきているため、介護に関する資格を取得するとよいでしょう。
そうすることで資格手当などの加算を受けることができます。
介護の資格でおすすめなのは、ケアマネージャー(介護支援専門員)です。
ケアマネージャーの需要は高いだけではなく、身体的な負担を減らした働き方が可能です。
独立する
理学療法士として独立することは、今の日本では難しいのが現状のため、独立のために資格を取ることが多いです。
独立のために取得する資格でよく取得されているのが、柔道整復師です。
柔道整復師を取得してから独立・開業となります。
理学療法士は医師の指示のもと、患者さんの施術を行うのに対し、柔道整復師は医師の判断なしで骨折・脱臼・ねん挫などの治療を施せます。
柔道整復師のほかに鍼灸師の資格を取得することで、整骨院や接骨院を開業できます。
将来的に独立を考えている場合は、柔道整復師や鍼灸師の資格を目指しましょう。
また、無資格でも施術ができる整体院を開業することで、独立も可能です。
セミナーを開催する
理学療法士や作業療法士向けのセミナーを開催することも一つの手です。
新型コロナウイルスにより、対面式だけでなくオンラインセミナーの需要も増えてきました。
オンラインセミナーであれば、通常の業務に支障を与えることなく開催できるため、負担も少ないです。
集客方法としてはSNSを利用するのが早いです。
それ以外の方法としてはセミナー講師を探している企業と契約するという手もあります。
SNSに慣れている人はSNSで、慣れていない人は企業と契約しセミナーを開くとよいでしょう。
副業をする
理学療法士としての知識や経験を活かし、副業で収入を増やすのもおすすめです。
知識を活かせる副業は以下の通りです。
- スポーツトレーナー
- インストラクター
- ライター
まずスポーツトレーナーは、スポーツ選手のけがのリハビリや予防、身体動作の指導などを担当します。
プロのスポーツチームや地域のスポーツチームなどと、個人契約を結ぶことで活動できます。
次に、ジムのインストラクターとして働くこともできます。
プライベート空間でパーソナルトレーニングを行うジムが増えたことから、インストラクターの需要は増加傾向にあります。
最後のライターは、文章を書くのが好きであれば知識を活かし記事を書くほか、記事の監修をするなど自宅での空き時間を利用して行える副業です。
ライターは未経験でも行えるため、気軽に副業を始めたいときにおすすめです。
このように理学療法士としての知識と経験を活かし、副収入を得られます。
転職をする
収入をアップするために独立などをしたいと思っても、新たに資格を取得する必要があるなど、手間がかかってしまいます。
しかし、収入は多いに越したことはありません。
そんな時は思い切って、転職を視野に入れてもよいでしょう。
転職であれば働きながらでも次の仕事先を見つけられます。
収入アップの仕事先でおすすめなのは、訪問リハビリです。
訪問リハビリであれば1訪問に対しての単価が高いほか、インセンティブで稼ぐこともできます。
そのため、訪問先が多いほど収入を得ることができます。
しかし、訪問リハビリは1人で全ての作業を行わなくてはいけないため、負担が増します。
給与は良くても長く働けないとなったら、転職する意味がありません。
転職の際は、待遇や職場環境などをしっかりとリサーチしたうえで、進めていくとよいでしょう。
まとめ
理学療法士の年収は、全産業と比較して若干低いですが、似たような水準にあるといえます。
しかし、ほかの医療系資格と比較すると、決して高い水準ではありません。
そのため収入を増やしたいのであれば、独立開業をする、副業をするなどの工夫が必要です。
また、転職するというのも一つの手です。
自分の将来に向けて資格を取得するなど、工夫して年収アップを目指しましょう。
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