金融業界への転職において必須の資格を徹底解明!
かつての金融業界の転職市場は、かなり閉鎖的であり、企業側も銀行員などの経験者以外は採用していない、という状況でした。
しかし、今日の金融業界は経済状況の流動化に伴い、制度の変容や商品・事業内容の増加によって多様な人材が活躍できるようになってきました。
そのため、現在では業界の外からも優秀な人材を積極的に招き入れるべく、多くの求人を出しています。
そうはいってもやはり、平均年収が高さが示すように、転職において採用されるにはかなりハードルが高いのも事実です。
したがって、金融業界において評価される資格を取得し、自身の転職市場価値を高めておくことが重要です。
この記事では、金融業界へ転職するうえで有利になる資格・履歴書に書くべき資格について詳しく見ていきましょう。
金融業界における資格の位置づけ
企業が転職者を中途採用する時には、以下の二つのパターンがあります。
- 新規事業や事業エリアの拡大に向けてポテンシャル採用をする場合
- 現在進行中の事業運営のために必要な欠員補充の即戦力採用をする場合
の二つです。
現況の金融業界は、ビジネスが拡大しているとはいえ基本的には内部での育成を軸としています。
つまり、内部での育成を軸としながら、適宜必要なピースを足していく、という2の即戦力採用がほとんどです。
したがって、金融業界への転職を考える場合には、以下の二パターンの性質のどちらかを有する資格を取得しておくべきだと言えるでしょう。
- 入社後の金融業務を行う上で不可欠の資格
- 自分に金融関連のスキル、知識が十分にあることを証明する資格
この記事では、この性質を有する資格の中でも、特に評価が高い資格を厳選してご紹介します。
金融業務を行う上で不可欠の資格
まずは、1の「入社後の金融業務を行う上で不可欠の資格」を5つ見ていきましょう。
二種外務員資格
投資信託、債券、株式等の金融商品の勧誘、販売をするためには、外務員資格が必須条件だと法的に定められています。
したがって、金融業界でもシステム管理系の職種に携わる場合は別ですが、金融ならではの主業務への募集の場合は、これを取得していない限り転職できません。
つまり証券会社、銀行、信託銀行、生命保険、損害保険会社の営業職にはこれが必須なのです。
それでも二種外務員資格の場合は現物株式のみの取り扱いとなり、信用取引やデリバティブ取引といったリスクの高い商品は扱えません。
リスクの高い商品を扱うには一種外務員資格が必要ですが、即戦力であることの証明としては二種外務員資格で十分でしょう。
詳しい試験の概要は以下の通りです。
- 受験資格:なし
- 試験日:原則として、月曜日から金曜日の毎日(祝日、年末年始を除く)
- 合格率:51.4%(平成28年度)
- 合否判定基準:440点満点の7割(308点)以上
- 受験料:8,704円(税込)
- 出題形式:○×方式50問(1問2点)、五肢選択方式20問(1問10点、五肢択二は5点)の合計70問
出題科目は
- 法令・諸規則(金融商品取引法及び関係法令/金融商品の勧誘・販売に関係する法律/協会定款・諸規則/取引所定款・諸規則)
- 商品業務(株式業務/債券業務/投資信託及び投資法人に関する業務/付随業務)
- 関連科目(証券市場の基礎知識/株式会社概論/経済・金融・財政の常識/財務諸表と企業分析/証券税制/セールス業務)
となっています。
銀行業務検定試験2級
銀行業務検定試験は、金融機関で働く上で必要なスキル・専門知識を測定する検定です。
先ほどの外務員資格とは異なり、この資格がないとその仕事に就けないという法的な規制はありません。
しかし、金融業界における専門家としてのアピールのためには必須の資格と言えます。
種目としては
- 法務
- 財務
- 税務
- 年金
- 外為
- 信託・証券
- マネジメント
- 融資・渉外
- 金融経済
- FA・預かり資産等
など多岐に渡っています。
また、こうした種目の中でさらに細分化されており、現在は24系統39種目の試験が実施されています。
実施試験の一部
法務/財務/税務/外国為替/証券/法人融資渉外/個人融資渉外/金融経済/信託実務/FA/窓口セールス/年金アドバイザー/営業店管理/デリバティブ/融資管理/投資信託/保険販売/預かり資産アドバイザー/経営支援アドバイザー/金融リスクマネジメント/金融商品取引/相続アドバイザー
これらを取得することで、金融業界のほぼすべての主要な業務スキルを証明できるようになっています。
種目によっては、2級と3級があります。
しかし、転職時のアピールポイントとして使うのであれば、2級が必須です。
合格率は30%未満とやや低くなっていますので、取得には勉強期間が必要な難易度の高い試験と言えます。
詳しい試験概要は種目ごとに異なりますので、一例として法務2級の場合を示しておきます。
- 受験資格:なし
- 合格率:27.5%
- 試験日: 6月・10月
- 出題形式:三答択一付記述式 10題(1題につき択一部分2点・記述部分8点の配点割合)
- 合格基準:満点の50%以上(試験委員会にて最終決定)
- 受験料:6,480円(税込)
試験科目構成としては
- 預金
- 手形・小切手(手形交換を含む)
- 融資(担保・保証・管理・回収を含む)
となっています。
より詳しく知りたい方、他の種目の試験概要を知りたい方はコチラへ!
貸金業務取扱主任者資格試験
「貸金業取扱主任者」という制度はまだ新しく、2009年8月に第1回の試験が実施されたものです。
しかし、法律によって貸金業者は、事務所または営業所において50人に1人以上の貸金業取扱主任者の在籍が必要となりました。
そのため、どの貸金業者も急ピッチで貸金業取扱主任者の確保を行っています。
これを取得していれば、貸金業界をはじめとする金融業への転職をする上でかなり有利になると言えます。
また、国としてもこの資格取得者を増やす行政上の必要性があります。
そうしたことから、早めの受験は合格しやすい可能性もあると言えますよね。
詳しい試験の概要は以下の通りです。
- 受験資格:なし
- 試験日:11月(平成29年の場合)
- 合格率:30.5%
- 合格基準:50問中30問正解
- 出題形式:4肢択一方式の50問(マークシート方式)
- 受験手数料:8,500円
試験内容は
- 法及び関係法令に関すること
- 貸付け及び貸付けに付随する取引に関する法令及び実務に関すること
- 貸金需要者等の保護に関すること
- 財務及び会計に関すること
となっています。
宅地建物取引士資格
「宅建」というと不動産業界の資格という印象がありますよね。
しかし、2015年に「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」へと変わったことによってその位置と価値が向上しました。
実は金融機関も、自ら多くの不動産を所有し、その資産管理、運用をしています。
また、信託銀行などの場合は、顧客の不動産の管理・運用業務も受託しています。
そのため、金融業界においてももはや必須の資格と言えます。
詳しい試験の概要は以下の通りです。
- 受験資格:なし
- 試験日:10月の第3日曜日
- 合格率:15.4%
- 合格基準:50問中35問以上(登録講習修了者は45問中30問以上)
- 出題形式:50問4肢択一式による筆記試験(登録講習修了者は45問)
- 受験手数料:7,000円
登録講習とは、国土交通大臣の登録を受けた機関において、宅地建物取引業に従事している者が受講できる講習のことです。
また、登録講習修了者とは、この講習を受講し、その修了試験に合格し「登録講習修了者証明書」の交付を受けた者で、試験の一部免除を受けようとする者をいいます。
試験内容は
- 土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造、種別
- 土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令
- 土地及び建物についての法令上の制限
- 宅地及び建物についての税に関する法令
- 宅地及び建物の需給に関する法令と実務
- 宅地及び建物の価格の評定
- 宅地建物取引業法及び同法の関係法令
となっています。
証券アナリスト資格(CMA、CFA)
証券アナリスト資格とは、日本証券アナリスト協会が認定する民間資格です。
CMAが日本の資格、CFAがアメリカでの資格になります。
証券アナリストは法的な必須資格ではありません。
しかし、経済情報や企業内容の分析、投資価値の評価をしたうえでの投資助言や投資管理サービスを提供できるスキルの証明になります。
特に、金融機関のリサーチ部門やファンド運用会社に転職をする上では不可欠な資格です。
また、銀行、証券会社でのリテール営業、証券会社での機関投資家営業、アセットマネジメントなどの場合も、転職に有利に働くでしょう。
ただし、証券アナリストは実務経験第一の職種です。
そのため、証券アナリストの資格を持っているからといって、未経験からいきなり証券アナリストとして転職できるかというと、その可能性はかなり低いです。
もしも目指すのであれば、入社後に調査部門への異動願いを出すのがステップになります。
CMAの試験は、講座と併せて1次と2次に分かれています。
また、CFAの試験はLevel1~Level3の3段階に分けられています。
Level | 問題format | 試験時間 | 出題数 |
---|---|---|---|
Level1 | 3つの選択肢から正解を選択 (マークシート方式:Multiple Choice) | 6時間(午前3時間、午後3時間) | 240問(午前120問、午後120問) |
Level2 | 3つの選択肢から正解を選択 (マークシート方式:Item Set) | 6時間(午前3時間、午後3時間) | 240問(午前120問、午後120問) |
Level3 | Essay(50%)及びItem Set(50%) | 6時間(午前3時間、午後3時間) | Essay:大問約10 Item Set:60問 |
ここでは、CMAの講座・試験概要について見ていきましょう。
まずは、証券アナリスト第1次レベルについてです。
- 開講期間:6月~
- 申込受付期間:4月~
- 受講料:55,500円(一般受講者の場合。会員受講者は49,400円)
- 試験実施時期:春(4月下旬)と秋(9月下旬または10月上旬)
- 試験形式:正解が1つの客観問題(計算問題・穴埋め問題を含む選択肢問題)
試験内容は
- 証券分析とポートフォリオ・マネジメント
- 財務分析
- 経済
の3つです。
証券アナリスト第2次レベルについては
- 開講期間:8月~
- 申込受付期間:6月~
- 受講料:52,500円
- 試験実施時期:6月上旬
- 試験形式:計算問題も出題されるが、大部分が記述式の応用問題
となっています。
試験内容としては
- 証券分析とポートフォリオ・マネジメント
- コーポレート・ファイナンスと企業分析
- 市場と経済の分析
- 職業倫理・行為基準
となります。
また、外資系企業で必須の資格、CFAについて詳しく知りたい方はコチラへ!
金融関連のスキル、知識が十分にあることを証明する資格
次に2の「自分に金融関連のスキル、知識が十分にあることを証明する資格」を3つ見ていきましょう。
ファイナンシャル・プランニング技能士2級
ファイナンシャル・プランニング技能士は国家資格ではありません。
しかし、国が認めた指定試験機関が実施する試験で認定される国家資格に準ずる認定資格で、1級から3級までランクがあります。
略してFPといい、取得者をファイナンシャルプランナー、FP技能士とも言います。
この資格を取得していることは、個人や中小企業の資産情報を分析し、人生設計などに沿った資金計画を立て、資産運用のアドバイスができるスキルが身についている証明になります。
多くの金融会社は、比較的小資金の資産運用を始め、保険、不動産、相続など、人生においてお金が関わる多くの場面での業務を行いますので、どれに就くとしても役立つ資格です。
転職時には2級以上持っているとアピールできるでしょう。
詳しい試験の概要は以下の通りです。
ファイナンシャル・プランニング技能士2級の受験資格は
- 3級FP技能検定の合格者
- FP業務に関し2年以上の実務経験を有する者
- 日本FP協会が認定するAFP認定研修を修了した者
- 厚生労働省認定金融渉外技能審査3級の合格者
のいずれかに該当する者となっています。
その他の概要は
- 合格率:学科試験41.44% 実技試験46.79%
- 試験日:5月28日・9月10日・1月28日(平成29年度の場合)
- 出題形式:学科 マークシート形式(60問) 実技 記述式(40問)
- 合格基準:学科・実技ともに6割以上
- 受検手数料:学科と実技合わせて8,700円
となっています。
学科試験の内容としては
- ライフプランニングと資金計画
- リスク管理
- 金融資産運用
- タックスプランニング
- 不動産
- 相続・事業承継
となっています。
また、実技試験においては、資産設計提案業務の範囲から
- 関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャル・プランニング
- ファイナンシャル・プランニングのプロセス
- 顧客のファイナンス状況の分析と評価
- プランの検討・作成と提示
に関する技能を記述式のペーパー試験で問うものとなっています。
ただし、これは「日本FP協会」で受験申し込みをした場合の実技試験です。
「金融財政事情研究会」での申し込みにおいては異なる形式となりますので、確認したうえで受験するようにしてください。
日商簿記1級
簿記はご存知のように会計業務の実務スキルを証明する資格です。
1級から初級まであるうち、簿記1級は大学程度の商業簿記、工業簿記、原価計算並びに会計学の修得をアピールできます。
金融業界への転職時に他の候補者と差別化するには1級レベルが必要です。
また、財務諸表規則や企業会計に関する法規も理解を通じて、全社的な経営管理や経営分析に役立てることができます。
そのため、銀行での法人営業などをする上でも欠かせません。
さらに合格すると税理士試験の受験資格が得られるなど、公認会計士や税理士などの国家資格の登竜門となっています。
こうしたことから、キャリアアップや独立開業も視野に入ってくる資格と言えます。
簿記検定を行っている団体はいくつもありますが、最も知名度が高いのは商工会議所の実施する日商簿記検定です。
詳しい試験の概要は以下の通りです。
- 受験資格:なし。1、2級併願も可能。
- 合格率:8.8%
- 合格基準:70%以上(1科目ごとの得点は40%以上)
- 試験日:6月11日・11月19日(平成29年度の東京商工会議所の場合)
- 受験料:7,710円
試験内容としては
- 商業簿記・会計学
- 工業簿記・原価計算
の2科目となっています。
TOEIC
TOEICはよく知られている通り、英語のリスニング力とリーディング力を測定する試験です。
金融業界に限りませんが、グローバル展開、海外企業との取引、M&Aなどをする上で英語力へのニーズは高まっています。
TOEIC900点以上であれば、年収は1.2〜1.5倍に評価されると言われているほどです。
詳しい試験の概要は以下の通りです。
- 受験資格:なし
- 試験日:年10回(1・3・4・5・6・7・9・10・11・12月)
- 受験料:5,725円
試験内容としては
- リスニング(約45分間・100問)
- リーディング(75分間・100問)
となっています。
平均スコアは579.4点(2017年6月実施)となっています。
まとめ
いかがですか。
勤務先として安心できる規模と事業内容となっている金融会社への転職を狙う場合、ハードルはほかの業界に比べて高いのが事実です。
したがって、金融業界への転職で有利になるための資格もレベルはかなり高く、合格を目指すには相当の努力が必要です。
しかし、資格を取得することで金融業界への転職を成功させれば、年収アップと安定した身分を手に入れることができます。
是非、ここで挙げた資格を取得し、金融業界への転職を成功させてくださいね!
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