一般的に「看護師の年収は高い」といわれています。
病院やクリニックなど、さまざまな職場で活躍する看護師。
病気に悩む人に寄り添い感謝されるやりがいのある職種ですが、実際の看護師の年収はどのくらいなのでしょうか?
ここでは看護師の平均年収や月収、年代別などの比較や、全職種との比較についてもご紹介します。
看護師の方はご自身の年収を判断する目安として、看護師を目指している方はキャリアプランを立てる参考としてご覧ください。
看護師の平均年収は?
平均年収 内訳
まずは看護師の平均年収です。
年 収 | 508 万円 |
月 収 | 35 万円 |
ボーナス | 86 万円 |
出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
- 平均年齢40.7歳
- 月収35.2万円×12カ月+ボーナス86.2万円
この金額は各種手当(夜勤手当、残業代、通勤手当など)も含んだ総額です。
ここから税金や社会保険料が差し引かれ、最終的に「手取り年収」は平均380万~405万円となります。
給与 内訳
次に看護師の年収・給料の内訳です。
主な項目は下記の通りです。
- 所定内給与額(基本給)
- その他諸手当(残業代)
- 残業代(時間外手当)
- 賞与(ボーナス)
これらの項目は一般企業の会社員と同様です。
ただし、看護師の「その他諸手当」には深夜労働に対する夜勤手当、条件を満たした職員に対する住居手当、扶養手当などが含まれます。
看護師の平均年収を比較すると?男性と女性では?
ここからは看護師の平均年収をカテゴリー別に比較します。
- 年代別
- 経験年数別
- 職場別
- 施設形態別
- 診療科別
- 都道府県別
- 職種別
平均年収 年代別
まず、年代別に平均年収を比較してみましょう。
看護師年代別平均年収一覧
年齢 | 平均年収 | |||
男性 | 女性 | |||
20~24歳 | 約376万円 | 約403万円 | ||
25~29歳 | 約485万円 | 約476万円 | ||
30~34歳 | 約520万円 | 約470万円 | ||
35~39歳 | 約539万円 | 約501万円 | ||
40~44歳 | 約573万円 | 約522万円 | ||
45~49歳 | 約580万円 | 約564万円 | ||
50~54歳 | 約600万円 | 約564万円 | ||
55~59歳 | 約528万円 | 約582万円 | ||
60~64歳 | 約461万円 | 約484万円 | ||
65~69歳 | 約422万円 | 約394万円 | ||
70歳~ | 約316万円 | 約401万円 |
出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
平均年収は男性女性共に経験を重ねるにつれ上昇します。
しかし、30~54歳にかけては女性に比べ男性の平均年収が高い傾向にあります。
要因として、女性がライフステージの変化により休職や離職をすることが多い中、男性は勤続しキャリアを積むことが考えられます。
ピークを迎えるのは、男性は50~54歳(600万円)、女性は55~59歳(582万円)でその後は次第に減少します。
平均年収 経験年数別
次に、経験年数別に看護師の平均年収を見てみましょう。
看護師 経験年数別平均年収一覧
経験年数 | 平均年収 | |
男性 | 女性 | |
0年 | 約304万円 | 約315万円 |
1~4年 | 約418万円 | 約409万円 |
5~9年 | 約464万円 | 約443万円 |
10~14年 | 約523万円 | 約460万円 |
15年~ | 約538万円 | 約522万円 |
出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
※上記にはデータの関係上「所定内給与額」が使用されております。
※「所定内給与額」とは、決まって支給する現金給与額から超過労働給与額(休日労働、深夜労働に対して支給される給与のことであり、時間外・早朝・休日・深夜などの手当のこと)を差し引いた金額をいいます。
データによると男性は経験年数が10~14年の時期に、女性は15年を超える頃に年収が500万円を超しています。
女性の平均年収が男性を上回るのは初年度のみで、その後男性の平均年収は経験年数を重ねるごとに上昇します。
このような差が生じる理由は、年代別の平均年収と同様に女性のライフステージの変化によるものと考えられます。
また、女性の35~39歳の平均年収は501万円ですが、新卒から継続して勤務した場合、35~39歳では経験年数が15年を見込めるため約522万円となる可能性もあります。
平均年収 職場別
看護師の年収は勤務する病院や職場によって異なります。
こちらはランキング形式で見ていきましょう。
2023年版「SUPER NURSE」によると看護師の職場別平均年収は下記の通りです。
看護師 職場別平均年収ランキング
1位 救急救命病棟(ER)勤務:約540万円
2位 大学病院勤務:約490万円
3位 大型総合病院勤務:約470万円
4位 クリニック勤務:約390万円
やはり緊急対応が多く長時間勤務が増える救急救命病棟勤務の看護師が高い年収となっています。
また大学病院の多くは「特定機能病院」に指定され高度・先進医療を担っています。
そのため一般の医療機関とは異なり、重症度や難易度の高い治療・手術を扱うことが多く、病院の収入となる診療報酬も高くなっています。
その収益が看護師にも還元されているとみられます。
また、大学病院の看護師は国公立大学のほか、私立大学附属病院の集中する都市部で高給傾向にあるといわれています。
これは「国公立か私立か」で年収の違いがあるというより地域差の影響によるものといえるでしょう。
平均年収 施設形態別
次は看護師の平均年収を施設形態別に比較したものです。
2023年版「看護師ワーカー」によると看護師の施設形態別平均年収は下記の通りです。
病院 | クリニック | 介護関連施設 |
437万円 | 409万円 | 394万円 |
訪問看護 | 企業 | その他 |
423万円 | 415万円 | 369万円 |
看護師が活躍できる場は、病院やクリニックをはじめ介護関連施設や訪問看護、企業内医務室など幅広く、就職・転職においてさまざまな選択肢があります。
高収入を目指す場合と働きやすさを希望する場合とでは選択する施設形態も大きくかわるといえます。
平均年収 診療科別
診療科別ではどうなるのでしょうか。
2023年版「看護師ワーカー」によると、看護師の平均年収が高い診療科は病理診断科、総合診療科、救急救命科、呼吸器外科、心臓血管外科、産科、口腔外科などです。
高い年収の理由として、急性期の診療や手術、がん患者のケアなどで幅広く高度な技術を要し、高い専門性が求められる現場であることが挙げられます。
平均年収 都道府県別
看護師の年収は働く地域によっても変化がみられます。
看護師の都道府県別ランキングTOP10位は下記の通りです。
1位 東京都 564.1万円
2位 奈良県 545.8万円
3位 兵庫県 541.5万円
4位 埼玉県 541.2万円
5位 富山県 535.0万円
6位 岐阜県 531.9万円
7位 和歌山県 530.2万円
8位 新潟県 529.8万円
9位 大阪府 529.5万円
10位 神奈川県 527.9万円
出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
2022年の調査によると、看護師の平均年収1位は東京都の564.1万円で47位は鹿児島県の396.4万円という結果となり、約170万円もの格差が生じています。
また、この年の全国平均は508.1万円となっており、鹿児島県は平均を111.7万円下回る結果となりました。
ランキングは調査の年によって変動がありますが、東京・大阪などの大都市圏の方が地方に比べて高い傾向にあり、それぞれの地域の給与相場が反映されているといえます。
平均年収 職種別
次は看護師の平均年収を医療・福祉関係の職種別で比較してみます。
看護師の平均年収はほかの職業に比べて高いのでしょうか?
月収とボーナスはどうでしょうか?
看護師 医療・福祉関係の職種別平均年収ランキング
職種 | 月収 | ボーナス | 年収 | ||
1位 | 医師 | 約110万円 | 約114万円 | 約1,429万円 | |
2位 | 歯科医師 | 約62万円 | 約62.9万円 | 約810万円 | |
3位 | 獣医師 | 約49万円 | 約93万円 | 約687万円 | |
4位 | 助産師 | 約40万円 | 約106万円 | 約584万円 | |
5位 | 薬剤師 | 約41万円 | 約86万円 | 約583万円 | |
6位 | 診療放射線技師 | 約37万円 | 約101万円 | 約544万円 | |
7位 | 臨床検査技師 | 約35万円 | 約91万円 | 約509万円 | |
8位 | 看護師 | 約35万円 | 約86万円 | 約508万円 | |
9位 | 保健師 | 約33万円 | 約81万円 | 約481万円 | |
10位 | その他の 保険医療従事者 | 約31万円 | 約68万円 | 約443万円 | |
11位 | 理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士 | 約30万円 | 約70万円 | 約430万円 | |
12位 | 歯科技工士 | 約33万円 | 約35万円 | 約429万円 | |
13位 | 准看護師 | 約30万円 | 約63万円 | 約418万円 | |
14位 | 介護支援専門員(ケアマネジャー) | 約28万円 | 約64万円 | 約406万円 | |
15位 | 保育士 | 約27万円 | 約71万円 | 約391万円 | |
16位 | 栄養士 | 約26万円 | 約62万円 | 約379万円 | |
17位 | 介護職員(医療・福祉施設等) | 約26万円 | 約54万円 | 約363万円 | |
18位 | 看護助手 | 約22万円 | 約46万円 | 約309万円 |
出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
看護師の平均年収は8位に属し、医療・福祉の中では高い年収といえます。
特に看護師の関連資格である助産師は、医師・歯科医師などに次いで4位であり好待遇の傾向です。
准看護師は13位という結果でした。
同じ医療における補助行為を行う職種でありながら、なぜ年収が異なるのでしょうか?
看護師が国家資格であることに対し、准看護師は看護学校卒業後に各都道府県知事が実施する准看護師資格取得の試験に合格し取得できる資格です。
看護師よりも准看護師の年収が低いのは資格取得の難易度によるものです。
そのため手術などにも対応する病院では看護師を、一般的な診療をメインとするクリニックでは人件費削減となる准看護師を求めるケースが多いのです。
助産師の年収が高いのは、国家資格である看護師免許のほかに助産師免許の取得が必要な職種だからです。
また深刻な助産師不足という背景があり、常に高い需要があることが理由とされます。
新卒看護師の初任給は?
新卒看護師の初任給は約26万~27万円ほどです。
初任給のうち手取りは21万~22万円となります。
- 専門卒 初任給:26万3711円(うち基本給:20万3276円)
- 大学卒 初任給:27万1730円(うち基本給:20万9616円)
(出典:日本看護協会「2022年病院看護・助産実態調査」)
看護師の「専門卒」と「大学卒」の初任給を比較すると差額は8,019円となり、年収差は約10万円ほどになります。
その後の昇給幅も、大学でより多くの知識を修得してきた大学卒のほうが一般的に有利とされています。
どの病院に勤めるかによっても給与は異なります。
また、新卒看護師の4月の給与は、職場によって満額支給されないことがあります。
給与の締め日が10日や15日の場合があり4月の給与に反映できないためです。
夜勤手当などがそれにあたりますが、翌月の給与には加算されます。
さらに、入職直後の夏のボーナスは5万~10万円程か、もらえない場合が多いです。
ボーナスは「一定期間の実績に対する評価(査定)」として支給されるため、まだ実績のない新人看護師の夏のボーナスはあまり期待できません。
一方、冬のボーナスは満額支給されるのが一般的でおよそ30万円が見込まれます。
看護師の年収を全職種と比較
ここでは看護師の年収をほかの全職種と比べてみます。
看護師 | 全職種 |
508.1万円 | 496.6万円 |
看護師(女性) | 全職種(女性) |
506.4万円 | 394.4万円 |
出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
看護師の年収とほかの全職種では、看護師の平均年収が全職種の平均年収をやや上回る状況となっています。
しかし女性だけを比較すると、女性看護師は全職種の女性平均と比べ100万円以上高い水準です。
この結果から看護師は女性の中では高い収入を得ることができる職種であることがわかります。
看護師の生涯年収は?全職種との比較
看護師の生涯年収はどのくらいになるのでしょうか?
看護師 | 2億2125万円 |
全職種 | 2億1462万円 |
全職種(女性) | 1億7106万円 |
出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
※22歳から64歳まで働き続けた場合の金額
看護師は一生で2億2125万円を稼ぐことになります。
看護師の生涯年収は、全職種と比較すると663万円ほど高いです。
さらに全職種の女性との比較では、看護師の生涯年収が5000万円以上も上回っています。
なぜ、これほど格差が生じるのでしょうか?
看護師の生涯年収が高い理由として、看護師は専門性が高い資格職であることが挙げられます。
そのため、子育てなどでブランクがあっても「いつでも働き口がある」「一生働ける」という安心感があります。
看護師はいつの時代でも需要があり、安定した収入が見込める重要度の高い職業といえます。
高収入が得られる職場とは?収入アップのポイントは?
看護師の年収は経験年数に伴い上昇しますが、そこまで大きな年収差とはなりません。
ある程度経験を重ねるとほぼ横ばいで推移する特徴があり、病院などでは職場の経営状態にも影響をうけることもあります。
「年収アップを目指すにはどうすればいい?」このように考えている方も多いかもしれません。
ここでは、看護師の仕事を続けることを前提により高い収入を目指す方法3つをご紹介します。
- 手当が付く資格を取得する
- 管理職を目指す
- 転職する
この3つが収入アップの方法です。
1つずつ解説していきましょう。
手当が付く資格を取得する
病院によりますが、日本看護協会が制定している「認定看護師」や「専門看護師」資格には、資格手当が付きます。
また助産師や保健師資格を取得したキャリアアップも昇給につながるでしょう。
(※ただし資格手当には明確な基準がなく、病院によっては支給しない場合もありますので確認が必要です。)
管理職を目指す
師長や主任といった管理職を目指してみませんか?
こちらも資格取得は必須となりますが、夜勤などの負担の大きい勤務は減り、役職手当が付きます。
長く看護師を勤めていきたい、次のステップに進みたいという方にはお勧めです。
転職する
これまでの経験やスキルを生かし転職する方法もあります。
5年未満の離職率が高いといわれる看護師。これから資格取得を目指すより早く収入をアップすることができます。
給与水準が高いのは、経営母体が大きな病院や自由診療を取り入れている美容外科や婦人科などです。
また高齢化社会が進む中、訪問看護師も需要が高い傾向です。
訪問看護師の雇用条件はさまざまですが、オンコール手当が付き収入がアップする可能性があります。
日勤のみというところが多く、融通の利く働き方ができるというメリットもあります。
まとめ
これまで看護師の平均年収をご紹介してきましたが、やはり看護師の平均年収は他の職種と比べると「高い」といえます。
なぜなら看護師は夜勤などの手当が多く、経験年数に伴い安定した収入が見込める職種であり、資格の強みがあるからです。
その一方で、その業務は多岐にわたり忙しく過酷な労働環境といえます。
さらに患者さんの生命に係わる医療現場での仕事は、精神的にも負担の大きいものです。
そのような事情を考慮すれば、看護師の年収はもっと高くても良いのではないかとも思われます。
これからますます加速する少子化時代において、医療の現場が担う役割がより重要になっていきます。
看護師として仕事に自信や手応えを感じ働き続けるために、改めて給与や業務内容、労働環境を見直してみると良いかもしれません。
コメント