あなたは警察官というとどんな人だと思いますか。
毎日、私たちの安全を守ってくれている警察官。
道に迷った時や落とし物を見つけた時に立ち寄る交番は地域の暖かい場所です。
夜間の地域のパトロール、交通安全の活動、事故や事件があった時に駆けつけてくれるお巡りさんはとても頼もしく映ります。
白バイに違反切符を切られて苦い思いした人もいるかもしれません。
テレビドラマの主人公として取り上げられることも多い刑事は人情に厚く、災害やテロなどの緊急時に備えて集団警備等に当たる機動隊などは寝る間も惜しんで働く頼もしい存在です。
ひとくちに警察と言ってもその活動は多岐に渡り、ひとりひとりが持つ警察官のイメージも異なっています。
昭和二十九年に制定された警察法によると、警察の責務とは以下になります。
警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
(警察法 第一章総則 第二条第1項)
出展:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000162
時に自らの危険を顧みず私たちの暮らしを支えてくれる警察官というお仕事。
その仕事の内容と報酬はどのような体系になっているのでしょうか。
警察官はどんな仕事をしているの?
まずは警察官の仕事の内容を見ていきましょう。
警察官の仕事には大きく分けて以下のような種類があります。
警察官の仕事の種類
地域課:交番勤務やパトカー等で見回りをして地域の安全を守る
交通課:交通違反の取り締まりや交通安全指導、交通事故の調査等を行なう
警備課:要人の警護やイベントの雑踏警備を担う
刑事課:強盗や殺人事件等、犯罪捜査を行う
組織犯罪対策課:暴力団等組織犯罪への対応を担う
生活安全課:振り込み詐欺等の対策を担う
犯罪抑止対策課:特殊詐欺等の対策を担う
人心安全関連事業総合対策課:虐待や暴力、行方不明者の対策を行う
公安警察課:テロ組織対策を担う
サイバーセキュリティ対策課:サイバー空間の犯罪対策を担う
総務課:予算や物品管理を担う
警務課:採用や人事などを担
日々の交番勤務やパトロール、ニュースで大きく取り上げられている社会問題、警察の仕事や組織は多岐に渡り時代と共に変化し密接に関連していることがわかります。
こういった仕事の多様性はまさに現代の世相を表しているといえるでしょう。
警察官に求められる資質とは
変わりゆく社会の中で警察官の仕事も変化しつつあります。
スキルや経験は学校で学んだり実際に警察官となって職務の中で学んだりすることが可能ですが、その前段階として、職業として警察官を選ぶ人は根底にどんな資質を備えているのでしょうか。
1.人の役に立ちたいという気持ち
まずはなんといっても「人の役に立ちたい」という気持ちを持っていることでしょう。
交番の前に立っている時、パトロールで巡回している時、彼らは決して「悪いやつをとっつかまえてやろう」という野心をむき出しにしているわけではありません。
困っている人が声をかけやすいように。
夜道で怖い思いをしている人が安心できるように。
そしていざ事件や事故が起きればすぐさま駆けつけて助けることができるように。
警察官がそういう気持ちで見守ってくれているからこそ、私たちの安全な暮らしが維持できているのです。
2.強い正義感
警察官は、時と場合によっては犯人ともみ合いになってけがをしたり命の危険にさらされることもありますが、それでも「正義感」があるからこそ犯人に立ち向かい市民の安全を守るよう努めます。
3.強靭な体力と冷静な判断力と忍耐力
いざという時に備え、警察官は日々体を鍛え知識を蓄え、その時に備えています。
警察官は組織だって事件や事故に立ち向かうことも多く、厳しい規律のもとに訓練を重ねています。
組織で動くからこそ求められる「冷静さ」や「判断力」「忍耐力」等も警察官の資質として求められるところです。
もちろん、人ははじめから強靭な肉体や精神を持っているわけではありません。
子供のころに漠然と「お巡りさんってかっこいいな。人のために役に立ちたいな」と思っていたことを実際に職業を選択するという立場に立った時に思い起こすのかもしれません。
また学生時代の部活動等を通じて培われる体力や忍耐力、組織力なども職業としての警察官になった時に役立つ資質といえるでしょう。
警察官になる方法
では実際に職業として警察官になるにはどのようにしたらいいのでしょうか。
警察官になるためには、国家公務員試験、または各都道府県警察の採用試験を受けることが必要です。
国家公務員採用試験に合格した場合をキャリアといいます。
キャリア組は入庁と同時に「警部補」の階級が与えられ、その後昇進試験を経ることなく警部、警視と出世していくエリートコースです。
一方、都道府県警察の採用試験を受けて合格した場合はノンキャリアで地方公務員となります。
受験資格は試験の日時は都道府県ごとに異なります。
警察官採用試験は、一次試験で「筆記試験」と「適性検査」等が行われ、二次試験で「面接」と「体力試験」があります。
いずれの場合も公務員試験合格後は警察学校に入校し、警察官として必要な知識や技術を学ぶことになります。
警察官になるために優位な資格はある?
警察官の職務も多様性が増しているため一概には言えませんが、体が資本の警察官になるためには剣道や柔道等の段位を持っていたり、各種のスポーツ大会入賞等の実績があると有利と言えます。
また近年はインバウンドの旅行客、就労者も増えており、英語や中国語、その他の語学力も必要とされてきています。
英検やTOEIC等で示せる結果を持っていると優位でしょう。
さらにサイバー犯罪も増えており、インターネット関連の知識として情報処理系の資格を取得しておくのも有利と言えます。
法律関連等も採用面では有利です。
大学進学後に警察官になることを目標とする場合は法学部に進む人も多く、そういった警察官採用に対応したカリキュラムを行なっている大学もあります。
警察官の平均年収は約700万円
総務省が発表した「令和3年度の地方公務員給与実態調査」によると、警察官の平均年収は694万です。
国税庁が発表している給与所得者の1人あたりの平均給与は461万円ですから、その差は200万円以上となります。
警察官は公務員のため、一定の基本給が法律で定められ、その規定に則って毎月支払われています。
では、どうしてそのような差がつくのでしょうか。
警察官の初任給は一般的な企業と変わらない
警察官の初任給は大学卒で約21万~26万円、高卒で約17万~22万円です。
この金額だけを見ると、一般的な企業や組織と大差なく思えますが、様々な要因により給料があがる仕組みがあります。
警察官は手当の種類が多い
警察官に支給される手当には、「扶養手当」や「通勤手当」「時間外勤務手当」と言った一般的な手当て以外に警察官ならではの手当があります。
「地域手当」は東京都や大阪府といった都市部等、物価の高い地域や人口の多い地域の職務に対して支払われます。
また北海道等の寒い地域には「寒冷地手当」もあります。
特に危険な業務に対して支払われる「特殊勤務手当」、緊急時や非常時に備えた業務に対して支払われる「宿日直手当」、その他「捜査等業務手当」「爆発物等処理手当」と言った警察官ならではの特殊な手当も多くあります。
特殊な技術や資格が必要な業務においては勉強や資格試験の合格も必要となるため、それ相応の手当が支給されるのです。
階級制度により昇給する
警察官の階級は、「巡査」「巡査部長」「警部補」「警部」「警視」「警視正」「警視長」「警視監」「警視総監」の9階級に分かれています。
各階級に上がるためには職務年数と経験、昇級試験を受ける必要があります。
大卒も高卒も巡査から始まります。巡査部長の試験を受けるためには大卒で1年間、高卒で4年間の勤務が必要となっています。
なお、キャリア組の場合は入庁と同時に「警部補」の階級が与えられ、その後昇進試験を経ることなく警部や警視へと出世していきます。
出世と同時に収入も上がり、30代で警察署長クラスの警部に上がることもあり、40代で年収1000万円程度にもなります。
公務員による安定した基本給に加えて様々な手当てや、年に二回支払われる勤勉手当と期末手当といういわゆるボーナス、また昇級による手当も上乗せされるため、警察官の年収は一般的な企業のサラリーマンの年収より200万円近くも高くなるのです。
警察官がもっと収入を増やすにはどうしたらいい?
先にあげた要素から、警察官の収入は様々な要因により決定されており、平均でいうとサラリーマンよりも高額になっていますが、逆に警察組織内での格差は存在しています。
では、収入のアップを優先して警察官という職業を選ぶ場合は、どのようなルートが最適なのでしょうか。
大きく分けて次の3つの方法があります。
1.国家公務員として入庁する
国家公務員、いわゆるキャリアとして入庁します。
ただし入庁できるのは年に10人程度のかなり狭き門です。
採用される人の大半は東大の法学部卒といった超エリートともいわれています。
キャリアは入庁時に「警部補」からスタートし40代で1,000万円、最も上の「警視総監」まで昇りつめれば約2,000万円の年収を得ることもできます。
収入のアップという面ではとても魅力的です。
2.昇級試験を受ける
地方公務員、ノンキャリアで採用された場合でも昇級試験を受けることによって収入を上げていくことが可能です。
最初の昇級試験を受けるには、大卒の場合は1年、高卒の場合は4年の勤務が必要です。
上の階級を目指してコツコツと努力していくことで収入をアップすることが可能となります。
試験までの年数は大卒と高卒で差がありますが、大学の年数と思えば学歴に関係なく、平等に昇給の可能性があると言えます。
なお、昇級試験を含め給料に男女の差はありません。
産休や育児休暇等もありますので女性にとってもチャンスのある職場ですが、出産や育児等を機に退職したり試験を見送る場合も少なくないのが現状です。
3.手当の多い都道府県の試験を受ける
上記のキャリア以外、各都道府県で試験を受けて採用される警察官はノンキャリアとなります。
採用枠は全国で毎年1万5,000人程と言われています。
警察官の採用試験は、自分の居住地域以外でも受けられますので、収入が多くなるような都道府県を選ぶのが効率的です。
総務省が発表した地域別の年収ランキングによると、1位は東京都の(約771万円)、2位が大阪府(約767万円)、以下3位神奈川県(約751万円)、4位愛知県(約734万円)、5位滋賀県(約733万円)となっています。
東京や大阪など大都市の年収が高いのが特徴的ですが、これは「地域手当」が高いことに加え、事故や事件等も多く発生するため残業代なども多いことによると思われます。
同様に同じ都道府県内でも手当の多い部署の配属を希望することで年収アップを計ることも可能となります。
尚、都道府県別で低いのは下から長野、北海道、栃木、熊本、岡山となっています。こういったランキングも併せて受験する地域を選ぶのも、将来の年収アップの面ではアリと言えるでしょう。
充実している福利厚生
都道府県ごとに異なりますが、警察官の福利厚生は充実しています。
住居手当、各種休暇制度、資格試験のサポート、全国に100もある福利厚生施設の利用、ライフステージ毎の給付金といった現役世代の警察官に直接役立つ福利厚生が充実しているだけでなく、健康管理や介護支援、退職金等についてもしっかりとしたサポートがされています。
住居面でいえば単身者向けの寮や家族住宅等もあり、家族の人数等に応じて広さを考慮して住居を選ぶことができます。
警察官は採用試験を受けた都道府県の所属になるため、県内での異動はありますが県外への異動はないため一軒家を購入する人も多いようです。
まとめ
警察官の年収は一般企業に勤める人と比べて高いことがわかりました。
しかし同時に、その職務の幅広さや益々広がる多様性に向けた対応力の強化等が必要ということがわかります。
警察官を目指す人は社会の仕組みと変化する情勢を日々勉強して冷静な判断力を磨き、任務に耐える強靭な肉体と精神力を培う必要があります。
これから警察官を目指す人はそういった様々な条件を考慮しつつ、仕事のやりがいと根底にある「誰かのために立ちたい」という思いに向き合いながら、一生のお仕事としての警察官をまずは身近なところから観察してみると面白いでしょう。
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