公務員はよく「将来安泰だ」とか、「公務員は薄給だ」と言われたりしますよね。
実際のところはどうなのでしょうか?
公務員の年収を徹底的に調査しました!
公務員とは
公務員とは国や地方自治体に勤務し、国や地域全体のために公共サービスを執り行う人のことです。
公務員は憲法により「全体の奉仕者」と規定されています。
営利目的ではなく、人々が幸せに生活できるようなサービスやシステムをつくり、支える仕事を担っています。
公務員は国や地方自治体の組織に属するため、民間企業のように経営悪化で突然倒産することはなく、安定しているのが特徴です。
- 社会や人の役に立ちたい
- 国や地域に貢献したい
- 安定した生活を送りたい
という人には向いている職業と言えるでしょう。
公務員の種類
公務員は国家公務員と地方公務員の2種類あります。
国家公務員は、中央省庁や国会、裁判所など国の機関に勤務する人のことです。
国家の運営や国際社会を視野に入れた事業に関わる仕事をしています。
国家公務員の職種は府省庁に勤務する人(いわゆる官僚)、外交官、自衛官、海上保安官、国会議員や内閣総理大臣が挙げられます。
地方公務員は、都道府県・市町村などの地方自治体で働く公務員のことを指します。
地方公務員の職種は都道府県庁や市役所の職員や、消防士、公立機関で働く看護師・薬剤師・保健師などがあります。
公務員の平均年収は
公務員の平均年収は約640万円~650万円です。
令和4年分 民間給与実態統計調査の結果によると、民間企業の正社員の場合、平均年収は約523万円です。
民間企業と比べると平均年収は公務員の方が高いと言えます。
ただし国家公務員か地方公務員かによって年収は違い、職種によっても年収が大きく変わります。
国家公務員
国家公務員の平均年収は?
令和5年国家公務員給与の実態によると、国家公務員の平均年収は約642万円です。
※全職種、ボーナス支給月数が4.4カ月の場合
(全職種の平均月収×12カ月)+(全職種の平均給与月額×4.4ヶ月)にて算出
(412,747円×12)+(334,218円×4.4)=6,423,523円
国家公務員の月収は?
令和4年の国家公務員 全職種の平均月収は約41万円です。
主な業種の平均月収を次の表にまとめました。
対象職種 | 平均俸給額 | 平均月収 | |
全俸給表 | 全職種 | 334,218円 | 412,747円 |
行政職俸給表(ー) | 一般行政事務職員等 | 322,487円 | 404,015円 |
行政職俸給表(二) | 一般行政事務職員等 | 286,942円 | 329,178円 |
専門行政職俸給表 | 航空管制官等 | 350,552円 | 446,205円 |
税務職俸給表 | 税務署職員等 | 352,263円 | 428,330円 |
公安職俸給表(ー) | 刑務官、海上保安官等 | 323,004円 | 382,749円 |
公安職俸給表(二) | 〃 | 339,218円 | 409,111円 |
研究職俸給表 | 研究所の研究員等 | 405,738円 | 562,418円 |
医療職俸給表(ー) | 医師、薬剤師、看護師等 | 511,570円 | 839,896円 |
医療職俸給表(二) | 〃 | 313,583円 | 357,899円 |
医療職俸給表(三) | 〃 | 321,176円 | 360,574円 |
専門スタッフ職俸給表 | 情報分析官、国際交渉官等 | 488,512円 | 601,518円 |
指定職俸給表 | 事務次官、局長等 | 858,493円 | 1,029,685円 |
民間企業の平均月収(正社員の場合)は約43.5万円です。
※民間企業の平均月収(正社員)は平均年収(523万)÷12で計算。
一般行政職の人の場合、月収約40万円で民間企業よりも少し低いといえます。
ただし専門性が高い職種や責任が重い職種は月収が高く、民間企業よりも高くなります。
国家公務員の平均月収の内訳
一般行政職の場合について平均月収の内訳を下の表に示します。
俸給 | 322,487円 |
地域手当等 | 43,800円 |
俸給の特別調整額(いわゆる管理職手当) | 12,688円 |
扶養手当 | 8,602円 |
住居手当 | 7,447円 |
その他 | 8,991円 |
合計 | 404,015円 |
地域手当等には、異動保障による地域手当及び広域異動手当を含みます。
その他は、本府省業務調整手当、単身赴任手当(基礎額)、寒冷地手当、特地勤務手当等が含まれます。
このように手当が完備されていて、福利厚生が充実していることは公務員の魅力の1つと言えます。
国家公務員のボーナスは?
国家公務員の給与(令和5年版)によると、ボーナス(一般職員の場合)は年間4.4カ月分です。
民間企業のボーナスの支給状況を基準にして支給月数が決まります。
一般行政職の場合、平均月給×4.4カ月で計算すると、
322,487円×4.4カ月=1,418,942円となり、一般行政職のボーナスの平均は約141万円と予想されます。
民間企業(男性正社員)の場合、ボーナスの平均額は92万円なので、約1.5倍多いと言えます。
参考:国家公務員の給与(令和5年版)、令和4年分 民間給与実態統計調査
国家公務員の初任給は?
国家公務員一般職の初任給(俸給)は、大卒程度で22万9,940円、高卒程度で19万2,720円です。
国家公務員のモデル的な給与例を紹介します。
モデル | 年齢 | 月額 | 年間給与 | 民間企業の年齢別平均年収(男性) |
係員 | 25歳 | 196,900円 | 3,213,000円 | 約420万円 |
係長 | 35歳 | 274,600円 | 4,541,000円 | 約549万円 |
地方機関課長 | 50歳 | 413,200円 | 6,702,000円 | 約684万円 |
本府省課長補佐 | 35歳 | 435,320円 | 7,192,000円 | 約549万円 |
本府省課長 | 50歳 | 749,400円 | 12,601,000円 | 約684万円 |
本府省局長 | ー | 1,074,000円 | 17,698,000円 | |
事務次官 | ー | 1,410,000円 | 23,235,000円 |
参考:国家公務員の給与(令和5年版)、令和4年分 民間給与実態統計調査
民間企業に勤める20代後半の男性の平均年収は約420万円です。
20代国家公務員の平均年収は約320万円なので、民間企業より低いといえます。
30代の係長クラスの平均年収は約450万円で、民間企業より100万円ほど低いです。
50代の地方機関課長クラスになると、民間企業とほぼ同じになり、年収は約670万円です。
本府省職員とは内閣府や総務省などの中央省庁の職員のことで、いわゆる官僚・キャリアと呼ばれる「国家総合職」と、総合職をサポートする「国家一般職」があります。
30代で本府省課長補佐クラスになるような人は国家総合職です。
30代で本府省課長補佐クラスになると民間企業に勤める30代の平均年収より約150万円高くなります。
50代で本府省課長クラスになると年収は1200万になり、民間企業の約1.8倍です。
さらに昇進すると、本府省局長で年収約1770万、事務次官になると年収約2300万円になります。
このように国家公務員は役職や職種によって大きく年収は変わります。
キャリア組やノンキャリといった言葉をよく聞きますが、同じ国家公務員でも給料に差があることがわかります。
地方公務員
地方公務員の平均年収は?
地方公務員の平均は約657万円と考えられます。
※全地方公共団体の全職種の平均月収×12カ月+都道府県の全職種の1人当たりのボーナス支給額で計算
(413,202円×12+1,615,953円=6,574,337円)
民間企業の正社員の場合の平均年収は523万円なので、地方公務員の年収は民間企業の平均年収より130万円ほど高いです。
地方公務員の月収は?
令和4年の全地方公共団体の全職種の平均月収は413,202円です。
※扶養手当や地域手当、時間外勤務手当などの諸手当を含めた金額で、一般行政職や医師・歯科医師職、警察職などすべての職種の平均月収になるので、職種によって金額は前後します。
全地方公共団体の一般行政職の場合、平均月給は315,093円で、諸手当を含めると平均月収は401,372円になります。
一般行政職の平均月収を都道府県、政令指定都市、市町村、特別区別でみると、政令指定都市が約43万円で最も高くなっています。
次いで特別区(東京23区)が約42万円、都道府県が約41万円、市が約39万円、町村が約35万円となります。
一般行政職の平均月収を団体区分別にまとめた表を下に示します。
都道府県 | 指定都市 | 市 | 町村 | 特別区 | |
平均月給 | 320,171円 | 318,310円 | 315,510円 | 301,252円 | 297,359円 |
諸手当 | 91,441円 | 113,278円 | 79,365円 | 52,165円 | 122,689円 |
平均月収 | 411,612円 | 431,588円 | 394,875円 | 353,417円 | 420,048円 |
地方公務員のボーナスは?
総務省が発表している期末・勤勉手当の支給状況によると、都道府県の全職種において、職員1人あたりのボーナス支給額は年間1,615,953円です。
一般行政職における年間のボーナス支給額を都道府県、政令指定都市、市町村別にみると、政令指定都市が最も高く、年間約162万円(4.3カ月分)でした。
次に高いのは都道府県で年間約155万円(4.3カ月分)、そして市町村が約146万円(4.4カ月分)でした。
また令和5年 職員の給与等に関する報告及び勧告の概要によると特別区のボーナスは4.65カ月です。
詳細なデータがないため概算ですが、約138万円と考えられます。
※特別区、一般行政職の平均月給297,359円×4.65カ月=1,382,719円と計算
一般行政職の平均ボーナス支給額を団体区分別にまとめた表を下に示します。
都道府県 | 指定都市 | 市町村 | 特別区 | |
支給月数(月) | 4.30 | 4.30 | 4.39 | 4.65 |
平均支給額(円) | 1,553,072 | 1,621,775 | 1,467,636 | 1,382,719(※) |
参考:総務省が発表している期末・勤勉手当の支給状況、特別区人事委員会発行の令和5年 職員の給与等に関する報告及び勧告の概要
(※)特別区のボーナスは4.65カ月、一般行政職の平均月297,359円×4.65=1,382,719円と計算
民間企業の平均賞与は約72万円なので、地方公務員のボーナスは1.9倍~2.25倍ほど多いことが分かります。
民間企業のように業績不振でボーナスが支給されない、というようなことはなく、ほぼ確実に支給されます。
景気によって支給月数が変動しますが、安定してボーナスを得られるのは公務員の魅力だと思われます。
地方公務員の年齢別の平均年収は?
一般行政職(大学卒)の経験年数別の平均月給は次の表のとおりです。
勤務年数 | 全地方公共団体 | 都道府県 | 指定都市 | 市 | 町村 | 特別区 |
1年未満 | 186,570 | 188,688 | 182,926 | 182,926 | 187,000 | 184,999 |
1年以上2年未満 | 192,557 | 195,087 | 189,512 | 189,512 | 189,811 | 189,609 |
2~3 | 199,495 | 201,528 | 197,182 | 197,182 | 196,482 | 195,367 |
3~5 | 210,486 | 213,333 | 208,476 | 208,476 | 205,695 | 207,636 |
5~7 | 226,165 | 229,751 | 224,894 | 224,894 | 219,119 | 229,004 |
7~10 | 245,774 | 250,211 | 246,816 | 246,816 | 237,798 | 250,024 |
10~15 | 278,578 | 284,319 | 283,511 | 283,511 | 265,701 | 290,636 |
15~20 | 327,492 | 335,094 | 331,572 | 331,572 | 310,085 | 340,874 |
20~25 | 365,228 | 370,695 | 370,729 | 370,729 | 352,394 | 372,715 |
25~30 | 390,401 | 392,300 | 398,706 | 398,706 | 378,803 | 390,237 |
30~35 | 409,015 | 408,466 | 420,351 | 420,351 | 396,433 | 398,994 |
35年以上 | 421,926 | 422,639 | 439,026 | 439,026 | 397,327 | 410,757 |
例えば大学卒業後、新卒で特別区(東京都23区)に一般行政職として就職した場合、年齢別の月収はどうなるのでしょうか?
下の表に特別区の年齢別の月収、年収をまとめました。
年齢(勤務年数) | 月収 | 年収 | 民間企業の年齢別平均年収 (男性の場合) |
22歳(1年目) | 約30万5000円 | 約455万円 | 約291万円 |
25歳(3年目) | 約31万5000円 | 約471万円 | 約420万円 |
30歳(8年目) | 約37万円 | 約563万円 | 約485万円 |
35歳(13年目) | 約41万円 | 約630万円 | 約549万円 |
40歳(18年目) | 約46万円 | 約713万円 | 約602万円 |
45歳(23年目) | 約39万円 | 約763万円 | 約643万円 |
50歳(28年目) | 約51万円 | 約796万円 | 約684万円 |
55歳(33年目) | 約52万円 | 約813万円 | 約702万円 |
参考:令和4年4月1日地方公務員給与実態調査結果、令和4年分 民間給与実態統計調査
※月収は(平均月給+特別区の諸手当の平均月額12万円)にて算出
※年収は(月収×12カ月+平均月給×ボーナス4.65カ月)にて算出
民間企業の年代別の平均年収(男性)と比較すると、全世代で平均以上の年収だということがわかります。
年功序列型に年収は上がっていき、40代で約700万円、50代で約800万円になります。
特に20代後半から30代前半にかけて大きく上がり、90万円ほど上昇します。
その後、30代前半から40代前半にかけて年収は50~80万円ほど増えます。
50代になると上がり幅は小さくなりますが、それでも10~30万円ほど上がります。
20代の頃の昇給率は低いですが、30代になると昇給スピードは速くなるということが推察されます。
30代は家庭をもち、家族を養うためにいろいろとお金がかかってくる時期です。
お金がかかる30代で年収が増えると、安心して家族を養うことができるのではないでしょうか。
このように公務員は年功序列型に安定して年収が増えていくため、長期的な将来設計がしやすいというメリットがあるといえます。
中途採用の場合の給与は?
20代後半の男性が特別区(東京都23区)の職員に転職した場合の給与を考えてみます。
令和5年度の採用情報によると、特別区は業務経験により採用区分が3つに分かれています。
1級職 | 係員の業務を行う職。 初任給は約251,700円 |
2級職 | 係長職への昇任を前提とした、係長職を補佐する職。 初任給は約298,900円 |
3級職 | 係長、担当係長、主査又はこれに相当する職。 初任給は約357,100円 |
20代後半とすると1級職になると思われるので初任給は約25万円です。
初任給×(12カ月+ボーナス4.65カ月)で計算すると、年収は約416万円です。
民間企業の20代後半男性の平均年収は約420万円なので、特別区職員の年収は民間企業と同じくらいと考えられます。
公務員のメリットとデメリット
公務員で働くメリットは
- 高水準で安定的な給与を得られる
- 業績に左右されない
- 福利厚生が充実して手当が多い
- 将来設計がしやすい
などが挙げられます。
本文では述べてませんが、上記以外にも
- 社会的信用が高い(ローンなど組みやすい)
- 地方公務員の場合、広範囲での異動が少ないため定住できる
- 給料に男女差はなく、女性でも活躍できる
というメリットがあります。
逆にデメリットは
- 年功序列である
- 若いうちは昇給率が低い可能性がある
- 職種によって民間企業より収入が低くなる
が挙げられます。
また公務員は副業禁止なので副業をしたい人には不向きといえます。
まとめ
公務員の年収は約640万円~650万円でした。
民間企業の正社員の場合、平均年収は523万円なので、公務員の年収は高いと言えます。
ただし、公務員には国家公務員と地方公務員があり、職種も多く存在するので、職種によって年収は異なります。
20代のうちは、昇給スピードは緩やかですが、30代~40代になると大きく年収がアップします。
勤務年数とともに安定的に年収が増加するので将来設計がしやすいといえます。
- 安定的に高水準の給与を得たい方
- 職業の安定性を重視する方
- 長期的なキャリア展望を持つ方
- ワークライフバランス重視する方
は公務員が向いているといえるでしょう。
コメント