女性に人気の歯科衛生士は、国家資格の専門職なので引く手あまたの人気職種です。
そんな専門技術が必要な歯科衛生士ですが、実は「その年収が低い」という声が聞こえているようです。
果たして、実際に働いている歯科衛生士の年収は低いのかどうなのか。
全国に14万人いると言われている歯科衛生士の年収について調べてみました。
歯科衛生士の平均年収はどれくらい?
歯科衛生士の平均年収として約369万円という金額が、学校法人東京慈慶学園『新東京歯科衛生士学校』のコラム内に提示されています。
この平均年収算定時の上限平均額が約439万円で、下限平均額は約332万円とのことです。
国税庁が発表した2022年の平均年収は458万円(賞与は72万円)ですが、これは民間企業で働く会社員やパート従業員も対象になっているものです。
男女別では女性の平均年収は314万円でした。
歯科衛生士はほとんどが女性なので、この女性の平均年収と比較すると一般的には歯科衛生士の年収は高めだと言えるでしょう。
ただし、一口に歯科衛生士といっても、働く場所や勤務体系などによって年収が異なるのが現状です。
歯科衛生士は専門的な職種のため、雇用先も多くあるので年収を重視するのであれば収入の高い雇用先を探しましょう。
ただ、年収が高いところは人の入れ替わりが早いということもありがちなので気をつけたいところです。
歯科衛生士の職場環境による年収の違い
こちらは厚生労働省が発表した都道府県別にみた一般的賃金の順位表です。
歯科衛生士専用のデータではありませんが、働く地域によって賃金の差が出てくるので参考にしてください。
給料の高い都道府県トップ5は、
1位:東京都(37万5,500円)
2位:神奈川県(33万5,600円)
3位:大阪府(33万900円)
4位:愛知県(31万2,600円)
5位:兵庫県(31万2,300円)
出典(データ):厚生労働省
となっており、やはり首都圏は高額になりますね。
実際に求人サイト『グッピー』でのデータをもとに、歯科衛生士のエリア別2023年卒初任給をグラフにしてみました。
全国平均が24万7,400円です。
その平均を上回っていたのが
・一都三県(26万8,467円)
・近畿(26万3,731円)
・中部(25万6,811円)
やはり、首都圏強しです。
歯科衛生士は営業職とは違い、売り上げのノルマなどはないため、毎月の給料は比較的安定しています。
ただ、働く場所や勤務体系などによってその額の違いが出てくるでしょう。
主な歯科衛生士の勤務先は、
- 個人経営の歯科医院
- 大学病院
- 総合病院
- リハビリ病院
- 介護施設
などがありますが、病院関係は日曜日・祝日は休みで土曜日も午前診療のみという医院が多く、時間外労働も厳しいものではないでしょう。
在宅看護を行っている病院やケアセンターのような介護施設で働く場合は、時間外労働も出てくるケースがあるかと思います。
歯科衛生士の学歴による年収の違い
こちらは厚生労働省が発表した学歴による賃金差の表です。
20~44歳までのデータを抜粋してみました。
特に歯科衛生士に限られたデータではないのですが、歯科衛生士は女性がその9割以上を占めているので参考になるかと思います。
男性の場合は高等学校卒から大学院卒の順番に高くなっていましたが、女性の場合は専門学校卒が高専・短大卒より高い年齢があります。
女性の場合、専門学校で学ぶ技術を活かした職業に就く方が多いということでしょう。
歯科衛生士の初任給からのアップ率
関東エリアで働いている歯科衛生士さん約6,000人と歯科医院4,000戸に聞き込み調査を行っているサイトによると、新卒の歯科衛生士の月収は23万円から23.5万円という金額があがっていました。
この金額は求人サイト(DENTAL HAPPY)用の採用内容から算出されたものなので、実際に各学校に向けての内容よりは高めになっているのではないでしょうか。
歯科衛生士は学校を卒業して国家資格を取得している人であれば、最初から技術は身に付いているので即戦力になります。
その技術に対する対価を踏まえた金額としては、人事労務分野の情報機関である産労総合研究所が実施した『2023年度決定初任給調査』によると大卒の全職種一律での平均額が21万8,324円となっているので相応の金額ということでしょうか。
多くのクリニックでの平均昇給額は、1年で約5,000円アップという金額が聞こえています。
歯科衛生士の給与は、勤務年数によって経験やスキルが身につくため、その技術に対して手当などが出る職場もあります。
歯科衛生士の年齢による給与の違い
具体的な年齢別平均年収として表示されていた金額です。
年齢による大きな差がでていないのは、女性メインの職種ゆえに結婚・出産による途中離職があるためだと思われます。
年齢順に昇給しているわけでもなさそうで、45~49歳が最も高額な年収となっていました。
口腔衛生の専門家として、歯科医院・病院・保健所・保険センター・介護施設などさまざまな場所で必要とされている歯科衛生士の数は不足しています。
その原因として、出産や育児で離職するケースが多いためと言われています。
45~49歳の歯科衛生士の給与が高額になっているのは、育児が一段落して仕事に集中できる年代ということもあるのでしょうか。
歯科衛生士の給料をあげるには
歯科衛生士の給料をあげるためには、まず実践で力をつけその技術を認められることが大きなポイントとなります。
勤続年数によって技術も向上し、給料はあがっていきますが、その他にも給料アップに向けてできる努力はあるようです。
まず、歯科衛生士としての仕事だけではなく職場内でできる仕事の範囲を広げていくことで、職場で必要とされる人材になることが効果大です。
それには、しっかりと仕事をこなし、先輩として新人教育を任せられる人材になること。
そして、時間があいた時には受付業務や事務作業なども率先して手伝えるようになると、それぞれ貴重な人材として認めてもらえるでしょう。
歯科衛生士として働きながら、「歯科技工士」の国家資格取得を目指して働いている人もいるようです。
Wライセンスでの働き方も給料アップの方法の1つですね。
認定歯科衛生士の資格を取得
歯科衛生士には、その仕事の内容についてさらに知識を深め技術を磨くことで取得できる資格があります。
特定の専門分野で技術を磨き高度な知識や技術が認定された場合、「認定歯科衛生士」という資格を得ることができます。
歯科医師の他に「認定歯科衛生士」が常駐しているということは、患者さんへの安心感にもつながるので医院にとってもプラスとなります。
そして「認定歯科衛生士」の資格を取得することでキャリアアップにつながり、当然給与も見直してもらえるはずです。
主な認定歯科衛生士の種類
- 歯周病認定
- 糖尿病予防指導
- インプラント専門
- 口腔機能管理
- 摂食嚥下リハビリテーション認定士
- ホワイトニング
ホワイトニングなど保険外の治療もあるのですが、病院側として力を入れているところもあるので勤務先の体制をチェックしましょう。
給料アップを望むのであれば、勤務先の推す分野を見極め専門性を深めていきましょう。
歯科衛生士の年収と働き方
大学を卒業してすぐに就職し中堅と評価され始めるのが25歳くらいです。
その時にステップアップのために転職を考える方も多いようですが、転職先では年数だけでは技術力が判断できないため、なかなか給料アップでの転職には厳しいものがあります。
高給を提示してくる歯科医院があるとしたら、「離職率が高い」「人材不足」ということも考えられます。
人材不足で人手が欲しいための高額提示はありだと思うのですが、「人材不足=離職率の高さ」ということも考えられるので、勤務時間などの情報を慎重に集めることが大切です。
また、求職の際、人材を確保するために給与額を高めに設定するところもありがちで、面接時や最悪の場合は働き始めてからいくつかの条件を提示して減額を伝えるところもあるようです。
歯科医は個人医院が多いため、採用の際、採用者のキャリアを重視するよりも院内のスタッフと上手にバランスがとれるかどうかを重視するところもあります。
自身のキャリアをプッシュして年収アップを提示する前に、気をつけておきたいところです。
歯科衛生士の働き方改革
歯科衛生士としての年収を確保するためには正社員として働くことがベストではありますが、現在はその働き方も多様化しています。
国家資格のある歯科衛生士だからこそ、フルタイムの正社員以外での働き方が多数あることもメリットの1つでしょう。
- 週5日のフルタイム勤務
- 週5日でも午前中だけの短時間勤務
- シフト制のパートタイム勤務
歯科衛生士の仕事はクリーニングなど予約制のものもあるので、勤務時間のシフトも組みやすいのではないでしょうか。
歯科衛生士として働くメリット
歯科衛生士は国家資格のある職種で、就職先も全国に広がっています。
歯科関係の診療所の数はコンビニよりも多いといわれるほどで、求人数も高く人材も不足しているので中途採用も多くあります。
全国各地で就職が可能なので、結婚などによる環境の変化にも対応可能なのは女性にとっては大きなメリットでしょう。
基本、歯科診療所は日曜日・祝日は休診が多く、時間外労働も少ないのでプライベートな時間を安定して取ることができるのもメリットの1つです。
仕事と家庭を両立させる環境が揃っているといえるでしょう。
歯科衛生士としてのやりがい
歯科衛生士へのアンケートでは、「やりがいがある」と回答している人が80%以上という結果が出ています。
(公益社団法人・日本歯科衛生士会ホームページより)
- 人や社会に貢献できる
- 頑張った分だけ結果がみえる
- 口腔内の健康を守ることは良い人生へのサポート
- 結婚・出産等のブランクがあっても復職可能
歯科衛生士という職業に就く方は、人のために何かをすることを惜しまず、その成果を糧に頑張れる方が多いのでしょう。
歯科衛生士の年収を考えた就職選び
歯科衛生士として勤務先を選ぶ際、まず気になるのは年収かもしれませんが、目先の数字にとらわれず、先を見据えた選択も考えるようにしたいですね。
待遇の良さはチェックが必要
求人情報の中でまず第一にチェックしてしまうのが年収でしょう。
初任給25万円・週休3日という条件で入社を決めた女性の例(DENTAL HAPPYより)をご紹介します。
初任給が25万円という金額提示は、まず休みが少ない過酷な勤務を疑いますが、そこに週休3日という文字があったので入社を決めたという女性。
フタをあけてみると、実際は3日間の休みがあるのではなく、週に5日間勤務でそのうちの2日間が半日勤務になるので、トータル3日間の休みという解釈だったそうです。
職場で働く先輩にも、「給与面で我慢しているけど、変わっている職場だから新卒者には厳しい」と言われ、数週間で転職を決意したそうです。
金額に誘われてしまった悪い例ですね。
その後、転職サイト(DENTAL HAPPY)で歯周病学会の指導医も務める院長の病院を紹介され入社。
歯周病の認定歯科衛生士の取得を目指して頑張っているそうです。
この転職サイト(DENTAL HAPPY)ではサイトでの非公開を条件に、病院のスタッフから直接職場の評価を聞かせてもらっているので、内部情報の詳細を転職希望者に伝えているそうです。
プラス面もマイナス面も理解し納得してもらった上で、働いてもらいたいと協力してくれる院長先生なら信頼できそうですね。
まとめ
歯科衛生士の年収は、国内就職者の平均と比べてみると極端に高い、低い、ということはないようです。
国家資格を有する歯科衛生士なので、給与面からいうと物足りなさを感じる方もいるかもしれません。
ただ、仕事としては人の為になるやりがいを感じられる職種であり、口腔内メンテナンスはこまやかな作業ができる女性ならではの適職だと思います。
歯科衛生士は仕事に就いたあとで、さまざまな方法でキャリアアップを目指すことが可能であり、年収アップに確実につながる職業でもあります。
専門職で安定性も高いので、年収と勤務条件を照らし合わせて自身にマッチした勤務先がみつかるといいですね。
コメント