患者の病気発覚やリスクを見つけ出す、医師の下で働く縁の下の力持ちのようなイメージを持たれている臨床検査技師。
医療従事者のため、それなりにお給料は良いと思っている方も多いのではないでしょうか。
他の医療専門職と比較すると、臨床検査技師のお給料はそこまで高くないことが現状です。
この記事では、臨床検査技師の年収や収入をアップさせるポイントを詳しくご紹介します。
将来臨床検査技師を目指している方や現在就職中の方も必見の内容となっておりますのでぜひ確認してください。
臨床検査技師の平均年収とは
全国的な国民の平均年収と臨床検査技師の平均年収を比較してみましょう。
国税庁が発表している「令和4年分 民間給与実態統計調査」では、全国平均年収は458万円でした。
一方で厚生労働省が発表している「令和4年賃金構造基本統計調査」によると臨床検査技師の平均年収は、約508万円でした。
社会全体の平均年収と比較すると、臨床検査技師の年収の方が高いことがわかります。
さらに詳しく、他医療専門職の平均年収や、臨床検査技師の年齢別、男女別の平均年収をみていきましょう。
他医療専門職との平均年収比較
他医療専門職の平均年収は以下の通りです。
・薬剤師:約583万円
・診療放射線技師:約544万円
・看護師:約508万円
・PT/ST/OT/CO:約431万円
他医療専門職と比較すると、臨床検査技師の年収は高いとはいえないでしょう。
引用元:令和4年賃金構造基本統計調査
年齢別の年収
厚生労働省が発表している「令和4年賃金構造基本統計調査」では以下のようになっています。
年齢が上がるにつれて、年収も徐々に上がっていき、40代以降大きく右肩上がりになっていることが分かり、
50〜59歳の年齢が平均で711.11万円と一番年収が高くなっています。
長い道のりですが、コツコツと地道に経験やスキルを磨くことで、徐々に年収が上がる傾向です。
臨床検査技師の平均年収は経験やスキルなどにより異なることが現状です。
また、働く場所や役職などによっても年収は大きく変化していきます。
男女別の年収
男女別の平均年収も比較してみましょう。
まず、厚生労働省が発表している「令和4年賃金構造基本統計調査」では、男女の合計年収は、508.92万円で男性は560.99万円、女性は481.64万円となっていました。
次に年齢別の年収を確認してみましょう。
20代はそこまで男女に年収の差は生じていませんが、30代以降から年収の差がついていることがわかります。
50代では圧倒的で337万円もの差があります。
女性は、結婚や子育てといったライフイベントの変化で仕事に影響が出やすいため、平均年収は男性と比較して下がってしまう傾向です。
臨床検査技師の初任給
臨床検査技師の平均初任給は、約19万5千円となっています。
一方で、全体的にみた初任給の平均は、厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」によると、新規学卒者の賃金を学歴別にみると、大学で22万8千500円、短大で20万2千300円、専門学校で21万2千600円、高校卒業で18万1千200円となっています。
全体の初任給と臨床検査技師の初任給を比較してみるとやや低いことがわかります。
引用元:臨床検査技師JOB
平均月収
では、臨床検査技師全体の平均月収はどうなのでしょうか?
グラフをみてみると、臨床検査技師の給与額別では26万~27.9万円が13%を占めており、月収40万超えは5%未満となっています。
全体の給与平均は約38万円となっていますので、臨床検査技師の給与額は低いといえるでしょう。
年収をアップさせるには?
今後、人口減少に伴い、臨床検査技師の業務は減少していくと言われています。
しかし、2024年からは「医師の働き方改革」が始まり、タスクシフト・シフトシェアに移行していきます。
臨床検査技師の業務内容はこれまでのものと異なり、求められる経験やスキルの変化に対応する必要があるでしょう。
変化に対応していくことができれば、働く場所等できることの選択肢は広がり、年収アップにつながります。
そこで、具体的な年収アップの方法を詳しく解説していきます。
より高い専門知識の習得
今後は、タスクシフト・シフトシェアに移行していく医療業界。
臨床検査技師はこれまでの業務内容の他、多岐に渡って業務内容の変化に対応していく必要があります。
2024年から医師の働き方改革が始まるにあたって、2023年の法改正により、臨床検査技師の業務内容が拡大されました。
業務内容は以下の通りです。
※医療用吸引器を用いて鼻腔、口腔又は気管カニューレから喀痰を採取する行為
※内視鏡用生検鉗子を用いて消化器官の病変部位の組織の一部を採取する行為
・運動誘発電位検査
・体性感覚誘発電位検査
・持続皮下グルコース検査
・直腸肛門検査
※医師または歯科医師の具体的な指示の下に行う必要があること
他にも臨床検査技師の業務に、採血・検体採取、生理学的検査に関連する行為として厚生労働省で定めるもの(医師又は歯科医師の具体的な指示を受けて行うものに限る。)が追加されています。
以上の業務内容は、厚生労働大臣指定講習会を受ける必要があります。
資格取得
また、以下の資格を取得することも年収アップに繋がるでしょう。
・超音波検査士
・細胞検査士
・一級・二級臨床検査士
・認定輸血検査技師
・認定血液検査技師
・緊急臨床検査士
・認定臨床生物検査技師
・認定一般検査技師
以上の資格の殆どが臨床検査技師の資格を持っていることが条件に含まれています。
また、資格取得だけではなく実務経験や各種学会に定められた年数以上の在籍が必要になります。
以下、代表として超音波検査士、細胞検査士の受験資格条件を挙げてみました。
超音波検査士においては以下の条件が必要になります。
①看護師・准看護師・臨床検査技師・診療放射線技師のいずれかの資格を取得
②日本超音波医学会若しくは日本超音波検査学会に3年以上所属していること
③本会認定超音波専門医・指導検査士の推薦が得られること
細胞検査士においては以下の条件が必要になります。
①臨床検査技師の資格を取得
②1年以上の細胞検査実務の経験若しくは日本臨床細胞学会認定の細胞検査士養成機関卒業見込み者又は卒業者
なお、資格取得後も5年ごとに資格更新の診査を受ける必要があります。
他業種で働く
臨床検査技師が活躍する場所といえば、病院や診療所、クリニックなどの医療機関。
しかし、他業種でも活躍でき、さらには年収まで上がる可能性があります。
臨床検査技師が活躍できる業種と平均年収、臨床検査技師に求められる役割を以下にまとめてみましたので、詳しくみていきましょう。
医薬品メーカー:平均年収は647万円。
仕事内容は主に臨床開発や製造・品質管理、研究開発、臨床試験におけるデータ収集や解析・管理を行います。
医療機器メーカー:平均年収は562万円。
アプリケーションスペシャリストというポジションがあります。
医療機器に関する知識や適切な使用方法を営業先の病院やクリニックへ伝える役目があります。
いわば、営業のサポートをする立ち回りです。
診断薬/臨床検査機器/臨床検査試薬メーカー:平均年収は549万円。
診断薬メーカーでの臨床検査技師の代表的な役割として、医師や薬剤師に医療用薬品の詳細情報を提供し、効能や効果・適性使用の説明を行います。
臨床検査機器メーカーでは、新しい検査機器やテクノロジー開発、臨床試験のサポートなど多岐にわたり、様々な業務を担当します。
医療広告代理店/出版社/マーケティング/リサーチ:平均年収は512万円。
臨床検査技師の経験や知識を活かして、広告立案やマーケティング立案のサポートを行ったり、医療規制やコンプライアンスを確認し適切な広告を管理していく役割を担います。
バイオ関連:平均年収は502万円。
近年、バイオテクノロジーに注目が集まってきています。
政府によると、技術開発、具体的なプレイヤー(企業)、育成、市場創出のための仕組み作り等について強みを分析・整理し、戦略的に方向性を検討していく必要があると示されています。
また、「日本版NIH創設に向けた新しい指標の開発(2) テクノロジー別にみた医薬品開発の現状俯瞰・将来予測」では、以下のように示されていました。
「バイオ医薬品の研究開発における米国の優位性が改めて認識された。また、日本の一部の分野で期待がもてる」
そのなかで、臨床検査技師は、医療技術の応用や品質管理、規制順守など多岐に渡り多くの分野で役割を担うことが期待されています。
ますます、今後、需要が高まるカテゴリーです。
引用元:doda平均年収ランキング(職種・職業別の平均年収/生涯賃金)【最新版】、経済省 バイオ政策の進展と今後の課題について
まとめ
今回は、臨床検査技師の平均年収や、他医療専門職との年収比較、年収をアップさせる方法についてご紹介してきました。
臨床検査技師は平均年収が508万円であり、薬剤師や看護師、診療放射線技師など他医療専門職の平均年収に比べてやや低いことがわかります。
臨床検査技師の平均年収を年齢別で確認すると、年齢が上がるにつれて年収もアップしていることがわかりました。
特に40代以降で大きく右肩上がりをし、50代では最も高い平均年収であることがわかります。
深掘りしていくと、臨床検査技師の資格を取得してからも、超音波検査士や細胞検査士等、実務経験を経てからではないと取りにくい資格がたくさんあり、医療機関で働く場合には、地道にコツコツと経験年数を重ねていくことが年収アップにつながることがわかりました。
男女別の平均年収を比較すると、30代以降で男女間の年収差が拡大していることがわかります。
理由として、女性の結婚や出産・子育てなどライフイベントの影響を受けやすいことが挙げられ、30歳以降の男女間の平均年収に差が生じています。
初任給については、臨床検査技師の平均初任給が約19万円であり、社会の一般的な初任給よりはやや低いことがわかりました。
働く場所(病院等の規模)によりますが、総じて臨床検査技師の給与は26~28万円未満が全体の約13%を占めており、給与額にバラつきがあります。
年収アップの方法としては、今後「医師の働き方改革」により臨床検査技師を含む医療専門職の業務内容や働き方が変化していくため、どの場所でも対応ができるよう高度な専門知識やスキルの向上が必要になります。
各種資格取得や実務経験のある人がますます需要されるでしょう。
あらゆる知識や経験を持っている臨床検査技師であれば、より高い給与の働く場所を選ぶことができ、また、その経験や知識を活かして異業種へのキャリアチェンジで年収がアップする方法もあります。
さらには、バイオテクノロジー関連では近年注目されており、政府も力をいれています。
市場動向を把握しておくことで今後どの業界が伸びるのかを確認し、臨床検査技師としての経験・知識を活かせる企業へ転職していくことも年収アップのポイントになりそうです。
コメント