職業訓練を選ぶ際は、安易に「なんとなく学びながら給付金が欲しい」という理由で決めてはいけません。
職業訓練では、給付金をもらいながら半年から1年かけて希望の科目を学ぶことができます。
一見すると魅力的に見えますが、実際には注意点があります。
支給される手当は10万円程度とかなり少なく、実務経験を積むことができないため、学んだ後に就職しても未経験扱いになってしまいます。
それに対して、未経験者も歓迎する企業に直接就職すれば、働きながら学べるうえ、給料ももらえます。
そのため、職業訓練を考える前に、このような選択肢も十分に検討してみることをおすすめします。
職業訓練とは
ハローワークは、国民の皆さまに安定した仕事の機会を確保するために、厚生労働省が管理している行政機関です。
正式な名称は公共職業安定所ですが、多くの方々に親しまれているハローワークや職安という略称でよく呼ばれています。
全国各地に設置されているハローワークでは、失業手当の手続きや転職相談、求人の紹介など、仕事に関するさまざまなサービスを受けることができます。
また、「職業訓練プログラム」も用意されており、いつでも複数の種類のコースを手頃な価格で利用できるようになっています。
職業訓練は誰でも受けられるのか
ただし、申し込みには条件や審査があり、各講座には定員があるため、全ての希望者が受講できるわけではありません。
応募者が定員を超えた場合は、失業状況や年齢などを考慮して受講者が選ばれます。
また、訓練内容によっては、一定の基礎知識が必要な場合もあり、スキルが不足していると受講できないこともあります。
職業訓練を受けて就職した場合と受けずに転職活動した場合の収入の違いは?
職業訓練を受けて就職する場合と、すぐに転職活動をする場合の収入を比較してみます。
どちらの場合も未経験者として転職することを想定しています。
同じ程度の月給の企業に入社するなら、職業訓練に通うよりも、早めに現場で働きながら学び、給料をもらう方が理にかなっています。
もらえる月給の基準は、未経験者と変わりません。
そのため、できるだけ早く正社員として就職したほうが、収入面でも精神面でもずっと楽になります。
職業訓練は行かない方が良いと言われるのはなぜ?
職業訓練に行かないほうがいいと言われることもありますが、その判断は人それぞれです。
「スキルがないから」という理由だけで職業訓練を受けるのではなく、以下のポイントをしっかりと検討してから決めましょう。
- スキルが身についても必ず転職できる保証はない
- 希望通りの講座を受講できないことも
- 失業期間が長くなる
- 就職支援でブラックな会社を紹介されるリスク
- すぐに転職できるスキルが身につくわけではない
- 給付金をもらえても生活に余裕はない
- スキルがなくても転職できる会社はたくさんある
スキルが身についても必ず転職できる保証はない
職業訓練でスキルを身につけても、必ずしも転職できるわけではありません。
厚生労働省の令和2年度の調査結果によると、職業訓練を受けた方の就職率は、基礎コースが52.5%、実践コースが60%にとどまっています。
職業訓練を受けた人のうち、約半数が就職できていない現状があり、「スキルを学んだ=転職が決まる」とは言えません。
スキルは、転職先の先輩社員から直接教わったり、自分で独学したりすることでも十分に習得できます。
未経験者や第二新卒者を積極的に採用し、教育体制の整っている企業も多いため、20代・30代の若手の方は、必ずしも職業訓練に通う必要はないでしょう。
希望通りの講座を受講できないことも
職業訓練に通う際は、希望通りの講座を受講できるとは限りません。
利用する施設の定員や講座の開始時期によっては、ご希望に添えない可能性があるのです。
例えば、Web制作やプログラミング、簿記会計・社会保険など、世間的に「将来性や安定性がある」と見なされている業界の講座は、受講希望者が多く、倍率が高くなります。
倍率が高い講座は、受講できる保証が全くありません。
スキルを効率よく身につけたい方には、就職や転職先で力をつける方法をおすすめします。
企業に勤めれば、実践的なレベルで求められるスキルを習得することが可能です。
職業訓練と企業で同じ期間スキルを学ぶ場合を比較すると、顧客を相手にする企業でスキルを磨くほうが、得られるものがより多くなります。
失業期間が長くなる
職業訓練に通うことを慎重に考える必要がある理由をご説明します。
まず、職業訓練に行かないほうが良い理由として、失業期間が長くなることが挙げられます。
「失業期間が長い」ということは、「無職期間が長い」ことにつながるため、就職・転職活動においてマイナスのイメージを与える可能性があります。
職業訓練の期間は講座によって異なりますが、おおよそ3ヶ月から2年となっています。
もし訓練期間中にしっかりとスキルが身につかなければ、数ヶ月から数年の貴重な時間を無駄にしてしまう可能性があります。
さらに、転職に不利になる可能性や、資金的な余裕がなくなることを考えると、中途半端な気持ちで職業訓練に通うことはおすすめできません。
就職支援でブラックな会社を紹介されるリスク
ハローワークの求人掲載は無料で、審査も簡単です。掲載のハードルが低いため、ブラックな企業が紛れ込む可能性があります。
厚生労働省の職業安定局が令和5年10月に発表した情報によると、ハローワークで職業紹介を受けた方の早期離職率は興味深い結果となっています。
ただし、この離職率には、ブラック企業だけでなく、職場に合わなかった方ややむを得ない事情で辞めた方の情報も含まれていることに注意が必要です。
求人情報だけでは分からない部分でミスマッチが起こっており、中にはブラックな労働環境の求人も存在する可能性があります。
ブラック企業を避けたい方には、取材済みの企業の求人のみを扱っている転職エージェントの利用をおすすめします。
すぐに転職できるスキルが身につくわけではない
職業訓練を受けても、すぐに転職に必要なスキルが身につくわけではありません。
職業訓練のコースは、最低でも3ヶ月は必要です。中には1~2年など年単位で通うものもあります。
時間に比較的ゆとりがある方は良いですが、すぐに転職したい方は利用しないほうがよいでしょう。
給付金をもらえても生活に余裕はない
職業訓練は給付金をもらいながら受けられますが、十分な金額ではありません。
職業訓練には「公共職業訓練」という種類があります。
主に失業手当を受給している方が対象で、訓練を受けている間は条件を満たせば、以下の手当を受給できます。
- 基本手当
- 受講手当
- 通所手当
基本手当は、離職前の賃金によって支給額が変わります。
受講手当は日額500円で、通所手当は職業訓練に通うための交通費です。
通所方法によって支給額が異なります。
もう一つは「求職者支援訓練」で、失業手当を受給していない方が対象です。一定の条件を満たす方は「職業訓練受講給付金」をもらえます。
支給額は月に10万円です。給付金は最大で10万円程度のため、生活が豊かになるわけではありません。
質素な生活が長く続くため、覚悟を決めて訓練を受ける必要があります。
一方、転職して会社に入社すれば、毎月安定した給料が得られます。
研修制度が充実した会社では、実務スキルを学びながら給料をもらえるため、職業訓練よりも転職のほうが合理的と言えます。
スキルがなくても転職できる会社はたくさんある
スキルがなくても大丈夫な会社はたくさんあります。
現在は人手不足の企業が多いので、入社後にしっかりと研修してくれる会社も多くあります。
例えば、職業訓練にはプログラミングのコースがありますが、エンジニアを目指すなら、未経験者も歓迎している会社に入るのがおすすめです。
職業訓練に行かない方が良い人はどんな人?
- 実践的なスキルを身に付けたい人
- 即転職を希望する人
- 明確な目標・目的を持っていない人
- 優良企業で働きたい人
- オンラインで学びたい人
実践的なスキルを身に付けたい人
職業訓練は、現場で直接働きながらスキルを身に付けるものではないため、実践的な環境を求める方には少し物足りないかもしれません。
現在では多くの企業が、社員育成を目的とした勉強会を実施しています。
つまり、働きながら現場の生の情報に触れつつ学べるので、実践的なスキルを習得しやすくなっているのです。
すぐに転職を希望する人
職業訓練でスキルや知識を学ぶには、一定の期間が必要です。
そのため、今すぐに転職したい方には向いていません。一般的に職業訓練は数ヶ月から数年まで期間が幅広く、転職活動に活かせるよう、じっくりと時間をかけて確かな知識を身に付けるイメージです。
例えば、転職エージェントを利用した場合、数ヶ月で採用担当者との面接まで進み、良い評価を得られれば内定を獲得できる可能性もあります。
急いで仕事に就きたい方は、職業訓練に時間を費やすことを無駄に感じるかもしれません。
明確な目標・目的を持っていない人
職業訓練に通う際、何を学びたいのかはっきりしていないと、無駄な時間を過ごしてしまう可能性があります。
一定期間の訓練が必要なため、目的が定まっていないと苦痛に感じるかもしれません。
軽い気持ちで訓練に臨むと学びが身につきにくいので、転職エージェントに登録してキャリアアドバイザーのサポートを受けるのがおすすめです。
優良企業で働きたい人
職業訓練機関はハローワークと連携していて、就職先を紹介してくれます。
業務量が明らかに多すぎたり、人間関係が悪かったりと、労働環境が良くない企業もあるため、優良企業を希望する方には向いていないかもしれません。
オンライン学習を望む人
職業訓練は基本的に対面式なので、オンラインを希望する方には適していません。
最近ではオンラインサービスが増えており、特にデザイン、プログラミング、動画編集などのパソコンを使う仕事は、オンライン学習が充実しています。
職業訓練に行った方が良い人はどんな人?
- 求めるスキルが明確にある人
- 給付金を受け取りたい人
求めるスキルが明確にある人
自分が目指す業界や職種で活躍するために、求めるスキルがはっきりしている場合は、職業訓練に参加するのがおすすめです。
職業訓練は、コースによって学べる内容が違うので、事前に詳しく確認しておくことが大切です。
職業訓練では、主に次のようなコースがあります。
幅広い仕事分野の知識が身につくので、自分が求めているものがはっきりしていれば、適切なコースを選びやすいでしょう。
給付金を受け取りたい人
職業訓練に行けば、給付金を受け取ることができます。
職業訓練受講手当として、毎月10万円が支給され、これを活用して必要な知識を学ぶことができます。
給付金がなければ、生活しながら転職に必要なスキルを学ぶのは難しい人が多くいます。
金額は決して多くありませんが、生活の支えになります。
職業訓練を受講している期間の給付金支給には、一定の要件があるので、自分が対象となるかどうかを事前によく確認しておくことをおすすめします。
職業訓練に通っても転職には有利にならないってほんと?はずかしいこと?
学んだ知識は転職活動の際に役立つので、自分の人生を豊かにする良い機会になります。
転職に不利だという噂を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。しかし、そんなことはありません。
むしろ、必要な知識を学べるので、プラスになると言えます。
ただし、効果的に学ぶためには、次のことに意識を向ける必要があります。
職業訓練に行っても何も身につかなければ、逆に恥ずかしいことになります。
転職に必要な知識を習得できていないと、ただ時間だけが過ぎて成長が見られず、結果として行動が遅いと評価されかねません。
職業訓練は中高年でも通っていい?
職業訓練は、ハローワークに休職の申し込みをしている方が対象となるため、比較的受講しやすくなっています。
ただし、企業実習付きの訓練コースは、おおむね55歳未満の方を対象としている点に注意が必要です。
また、職業訓練は男女を問わず、すべてのコースで受講が可能です。
実際に、インターネット上では、中高年の方が職業訓練に通っているという体験談が多く見られます。
年齢的に若くないと感じている方や、職業訓練に通うことに躊躇している方も、心配する必要はありません。
職業訓練に通って後悔しない選び方3つ
将来どんな仕事に就きたいかをしっかりと決めておかないと、受講するコースも定まらず、必要な知識を学べない可能性があります。
希望する仕事を明確にすることで、本当に職業訓練が自分に必要かどうかを知るきっかけにもなります。
- 就きたい仕事を決める
- 事前に見学をする
- 実績を調べる
事前に職業訓練校を見学することで、どのような学習方法や雰囲気なのかを把握できます。
実際に通い始めてからのイメージを膨らませるためにも、事前に情報収集をしておくことをおすすめします。
また、過去の実績を調べることも大切です。
希望する職業訓練のコースの就職率を数値で比較することで、将来の見通しを立てやすくなります。
就職率が高ければ、その分将来に対する期待も持てるでしょう。
職業訓練よりも転職エージェントの方がおすすめな理由3つ
- 優良企業が多く掲載されている
- キャリアアドバイザーによるサポートを受けられる
- 入社日調整年収交渉などを実施してくれる
転職エージェントは、国内有数の大手企業を含め、たくさんの求人を掲載しています。
在籍するキャリアアドバイザーが、あなたの希望に合った仕事を丁寧に紹介してくれるので、質の高い求人が多いのが魅力です。
ハローワークの求人を紹介してもらうことは悪くありませんが、優良企業の数は転職エージェントの方が多いと考えられます。
キャリアアドバイザーは、求人紹介だけでなく、応募書類の添削や面接対策など、内定獲得に向けて充実したサポートを提供してくれます。
各業界の転職事情に詳しいアドバイザーが、その知識を基にアドバイスをしてくれるので、内定率アップが期待できます。
さらに、入社日の調整や年収交渉など、企業との交渉を任せられる点で心強い存在です。
まとめ
職業訓練には、個人の意思や環境、職業訓練校の選択など、さまざまな背景が関わっているため、単純に「意味がない」とは言えません。
次のような方にとって、職業訓練は知識やスキルを経済的に学べる有意義な制度です。
- 未経験の職種に挑戦したい方
- 将来の目標がはっきりしている方
- お金をかけずに学びたい方
- 資格を取得したい方
- 独学に自信がない方
「次は未経験の職業に挑戦したい」「○○の仕事に就きたい」と具体的な希望をお持ちの方は、ぜひ職業訓練の受講をご検討ください!
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