社会保険労務士(社労士)について調べていると、「意味がない」「やめておいた方がいい」といった否定的な意見に出くわすことがあります。
結論から申し上げますと、社労士に意味がないということは、決してございません。
この記事では、なぜ社労士が「意味がない」と言われてしまうのかをわかりやすく説明いたします。
社会保険労務士がやめとけと言われる理由
知名度が低い
社会保険労務士は、国家資格の一つですが、士業の中ではあまり知られていない資格です。
例えば、弁護士や税理士は、「訴訟」や「税務の代行」といった仕事の内容をすぐに思い浮かべられる方が多いでしょう。
一方、社会保険と労務という複雑で幅広い業務を行っている社会保険労務士については、そう簡単にイメージできません。
社会保険労務士の仕事は、一般の方に正確に理解されているとは言えない状況で、これが「意味がない」といった意見が出てくる理由の一つと考えられます。
しかし、社会保険労務士は、企業と労働者が安心して活動できる環境を守るという大切な役割を担っています。
独立開業には廃業リスクも伴う
社会保険労務士について「意味がない」とする意見の中には、「国家資格を取って独立開業しても、廃業してしまう人がいる」という声もあるようです。
集客できず仕事を獲得できないと、経費や資格維持にかかる費用ばかりが増え、廃業せざるを得なくなります。
毎月決まった給料が入ってくるサラリーマン時代にはなかった苦労があるでしょう。
ただ、資格を取得する「だけ」では生活できないのは当然で、これは社会保険労務士に限ったリスクではありません。
そして努力次第では、サラリーマン時代よりも大きく稼ぐことも可能なので、独立開業をリスクだけと結びつけるのは早計です。
また、今はもう「サラリーマンになれば定年まで安泰」という時代ではありません。
「せっかくサラリーマンになっても、会社を辞めてしまう人がいる」のです。
独占業務のある国家資格を取得して個人の力を高めることは、これからの時代において十分意味があります。
また、社会保険労務士は独立開業だけでなく企業内でも活かせる資格です。取得後は多様な働き方の可能性が開けるでしょう。
従来の業務がテクノロジーに代替されつつある
近年は、あらゆる分野でデジタル化が進み、これまで人間が行ってきた仕事が次々とテクノロジーに置き換えられています。
こうした状況の中で、これから社会保険労務士の資格を取得しても「意味がない」という意見もあるようです。
確かに、社会保険労務士の仕事のうち、日常的な定型業務は、AI活用や電子申請の普及により縮小していく可能性があります。
しかし、労働問題を未然に防ぐための就業規則の整備や、人事評価制度の策定・運用など、企業の相談に乗って課題を解決するコンサルティング業務へのニーズは高まっています。
最近は「働き方改革」が注目されています。労働者が働きやすい環境を整えることは、企業が優秀な人材を確保する上で非常に重要で、多くの企業が抱えている課題です。
社労士の仕事内容
社会保険労務士(社労士)は、人事や労務管理の専門家です。
職場環境を良くしたり、企業の経営や業務を効率的にするために、人事や労務に関する課題解決をサポートします。
社労士の主な仕事は、次のとおりです。
労務管理に関する書類作成や帳簿作成は、社労士だけが行える独占業務となります。
また、労務管理や社会保険に関する相談・指導は、コンサルティング業務に当たります。
独占業務ではないため、社労士資格がなくてもコンサルティングを行うことができます。
ただし、依頼する側からすると、人事や労務に関する国家資格を持つ社労士のほうが信頼できるでしょう。
社会保険労務士になるには?
社労士になるためには、次の3つのステップを踏む必要があります。
まず、社労士試験に合格することです。この試験が3つのステップの中で最も難しいポイントとなります。
試験に合格できましたら、次は実務経験を2年以上積むか、事務指定講習を修了する必要があります。具体的には、以下の2つの方法があります。
1. 実務経験を2年以上積む
2. 全国社会保険労務士会連合会が実施する事務指定講習を修了する
これらの条件のいずれかを満たしたら、全国社会保険労務士会連合会の社会保険労務士名簿に登録することができます。
名簿への登録が完了すれば、正式に社労士として活動できるようになります。
社会保険労務士が向いている人の特徴
独立志向が強い方
独立やキャリアアップを目指している方には、社会保険労務士の資格がおすすめです。
社会保険労務士は、正社員の平均年収を上回る収入があり、労務に関する専門的で独占的な業務を行うことができます。
多くの企業が社会保険労務士の資格を持つ人材を求めており、現在の年収よりも高い企業に転職しやすい環境があります。
また、社会保険労務士は独立開業が可能な資格でもあります。
正義感があり、規範意識が高い方
社労士は、法律に違反している企業に対して改善を提案する仕事もあるため、正義感が強く、ルールを大切にする方に向いている職業です。
社労士は、働く人々が快適に仕事ができる環境づくりという大切な役割を担っています。
そのため、労働基準法などを守っていない、または知らずに古い方法を続けている会社に対して、改善点を伝える場面もあるでしょう。
会社の発展に役立ちたいと思う人
社会保険労務士は、会社全体の人事や労務管理を担当する専門家です。
社労士が適切に業務を遂行することで、会社全体の成長に寄与することができます。
特に労務管理や労働法に関する業務は、高度な専門知識が求められ、対応が複雑な場合が多いです。
社労士が業務を担当することで、他の従業員は本来の業務に集中でき、会社全体の業務運営がスムーズになります。
さらに、社労士が関与することで、他社から労務管理を徹底している企業として評価され、会社の信頼性も向上するでしょう。
数字に強い人
社労士の仕事では、毎月の健康保険料を計算し、帳簿に記入する作業があります。
従業員一人ひとりの保険料や給与を計算するため、数字を扱う機会が多くなります。
また、お金に関わる業務もあるため、計算を間違いなく正確に行うことが大切です。
コミュニケーション能力が高い人
社労士は、さまざまな人と話をする機会の多い職業です。
特に労務管理の相談や指導を行う際は、相手の話をしっかりと聞き、適切なアドバイスをする必要があります。
また、独立して開業した社労士は、新しい仕事を得るために積極的に営業活動を行わなければなりません。
人と話すことが好きで、相談に親身に乗れる方は、社労士の仕事に向いているでしょう。
忍耐力のある人
社労士の仕事は、じっくりと丁寧に進める作業が多いです。
企業と関わる仕事のため、途中で諦めることは許されません。
帳簿の作成などは毎月行うため、根気強く続けられる能力が必要です。
また、社労士試験に合格するにも、強い意志が求められます。
合格率が低く、とても難しい社労士試験。
たとえ不合格になったとしても、諦めずに少しずつ勉強を続けていけば、きっと合格できます。
転職を考えている人
ほとんどの企業には人事労務部門があります。人事労務の専門家である社会保険労務士は、企業にとって大切な戦力であり、部署のリーダー的な存在です。
労働・社会保険の法律に精通しており、職場で判断に迷った際も、客観的で適法な対応ができます。
また、自分を守るために資格を取得する人もいます。すぐに独立開業はできないけれど、会社員のまま社会保険労務士としてスキルを磨くことは可能です。
会社から毎月給与をもらいながら、社会保険労務士としての能力を高めていくことができます。
都道府県の社会保険労務士会への会費は避けられませんが、その代わりに最新の情報を得られ、様々な勉強会に参加できます。
うまく活用すれば、資格取得後の知識の低下を防ぎ、将来の独立に備えることができるでしょう。
社会保険労務士を目指す人へのリスク
資格取得に時間や費用がかかる
社会保険労務士になるには、独学で約1,000時間の勉強が必要です。
勉強時間を減らすには、効率的な学習方法を選び、専門学校の講座を検討するとよいでしょう。
専門学校は、カリキュラムが充実していて学習効率が高いですが、費用もかかります。
独立開業によるリスク
社会保険労務士は、社会的信頼性が高く、独立開業できる国家資格です。
独立開業する際は、さまざまなリスクがあることを知っておく必要があります。
開業したからといって、すぐに仕事が入るわけではなく、自分で営業活動をしなければなりません。
営業がうまくいかないと仕事が減り、経営が厳しくなる可能性があります。
AIに仕事を奪われる可能性
最近は、AIの技術が急速に進歩し、ソフトウェアや電子申請によって業務が大幅に簡略化されています。
今後、競争がさらに激しくなることが予想されるので、注意が必要です。
社会保険労務士をはじめ、仕業を目指す人は将来のことも考えた上で行動しましょう。
仕業が向いていない・難しいと感じた人は、ぜひ転職エージェントの活用をおすすめします。
社会保険労務士に関してよくある質問
社労士試験の合格率・難易度
社会保険労務士試験の合格率は、6〜7パーセント程度と低く、合格するためには500〜1,000時間の勉強時間が必要です。とても簡単な試験ではありません。
難しい理由としては、試験の出題範囲がとても広く、さらに各科目に合格基準点があり、一つの科目でも基準点を下回れば不合格になってしまう点が挙げられます。
苦手な科目や捨てる科目を作れないことに、多くの受験者が苦労しています。
ただし、仕事を辞めて勉強に専念しなければ合格できない資格ではありません。働きながらコツコツと努力すれば、必ず合格できます。
社労士の年収
社会保険労務士(社労士)の働き方には、主に2つのタイプがあります。
勤務社労士の平均年収は、厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、約460万円となっています。
この調査での全体平均が約464万円でしたので、勤務社労士の年収は、おおむね一般的な水準と言えます。
一方、開業社労士は、努力次第で年収1,000万円を超えるケースも珍しくなく、勤務社労士の収入を大きく上回る可能性があります。
まとめ
社会保険労務士は、企業にとって大切な存在となる資格であり、平均寿命が延びている現代では、とても役立つ資格です。
受験勉強では、何度も「覚える」作業を繰り返しますが、そのようなちょっと地味な作業に抵抗がない方におすすめです。
資格を取得した後は、企業向けでも個人向けでも活躍できる場があり、仕事の分野がとても広い資格となります。
逆に、仕事の範囲があまりにも広すぎて、すべての分野で専門家になることは難しい資格と言えるでしょう。
そのため、自分が進む専門分野をしっかりと決めて、さらに学び続けていくという考え方が大切です。
ただし、難易度は高く中途半端な気持ちで挑むと挫折しやすい点もあります。
自分にとってどんな資格・職業が向いているのか迷っている人は、ぜひ転職エージェントの活用を検討してみてはいかがでしょうか
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