イノシシやシカ、真鴨などの野生動物を狩猟して食肉として楽しむジビエや、農作物への被害を解決する重要な役割を担う猟師が、最近注目を集めています。
この記事では、猟師を副業として考えている方向けに、仕事の内容や始め方、得られる収入、注意点などを詳しくご説明いたします。
猟師の年収は220~260万円
プロの猟師の平均収入は、年間220万円から260万円です。
その中でも「認定鳥獣捕獲等事業者」という資格を持つと、年間300万円から350万円くらい稼げます。
この資格は都道府県がお墨付きを与えるもので、都道府県から仕事を任されることができます。
税金が安くなったり、活動のための資金や動物の処理にかかるお金がもらえたりする良い点があります。
趣味として猟をする人の場合は、年間20万円から30万円くらいの収入です。
でも、最初に罠や銃を買うお金がかかるので、あまり獲物が捕れないと損をすることもあります。
年齢別の年収
猟師の年収は、経験を積むことで増加します。以下は、年齢別の平均年収の一例です。
20代: 平均年収は約250万円から350万円です。新人猟師として経験を重ね、スキルを磨いていきます。
30代: 平均年収は約350万円から500万円です。中堅猟師として経営のノウハウを身につけ、安定した収入を得ることができます。
40代: 平均年収は約500万円以上です。ベテラン猟師として多くのプロジェクトを手がけ、成功すれば高収入を得ることができます。
猟師の仕事内容
猟師は、山や野原に行ってシカやイノシシ、鳥などを銃で捕まえ、それを処理して肉や皮、骨を売ってお金を稼ぐ人のことです。
テレビでもよく見かけますが、市や町から頼まれて、数が増えすぎた動物や、田んぼや畑を荒らすサルや熊を捕まえる仕事もしています。
狩りには2つの種類があって、1つは狩猟免許を取って都道府県に登録する「登録狩猟」、もう1つは困った動物を捕まえるための「許可捕獲」です。
登録狩猟では、捕まえた動物を売らないとお金になりません。副業として猟師をやってみたい人は、市や町の動物被害対策に協力すると報奨金がもらえる許可捕獲の申請をするのがよいでしょう。
鳥獣の販売
シカやイノシシを捕まえて処理し、肉や皮を業者に売るのが、猟師の一番一般的な収入の方法です。
最近は野生動物の肉が人気で、牛や豚とは違う味や食感を楽しみたい人がたくさんいます。
シカの角も人気があって、お部屋の飾りやアクセサリー、漢方薬の材料として使われます。
捕った鳥獣を販売する方法
捕獲した鳥獣を解体して販売し、収益を得る方法もありますが、解体には時間がかかり、技術や資格も必要です。
特別な技術や資格がない場合は、解体業者に販売するほうが効率的でしょう。
また、シカの角はフリマアプリで売ることもできます。
害獣駆除
イノシシやサル、また飼い主に捨てられて野生化したアライグマなど、人々や田畑、家を傷つける動物の駆除も、猟師の仕事です。
普通の狩りは11月15日から2月15日までですが、有害鳥獣駆除は市や町から依頼があれば、ほぼ1年中活動できます。
有害鳥獣駆除は国からの仕事なので、地域によって金額は違いますが、1頭につき3,000円から3万円の報奨金がもらえます。
ただし、この仕事をするには、狩猟免許を持っているだけでなく、各都道府県の猟友会(※1)に入る必要があります。
そして、しばらく活動した後で、鳥獣被害対策実施隊(※2)に入るための推薦書を申請し、実施隊のメンバーにならなければいけません。
※1: 大日本猟友会
※2: 鳥獣被害対策実施隊の設置について
有害鳥獣駆除で報奨金をもらう方法
猟師が動物を捕獲した際、有害鳥獣駆除として報奨金を受け取れる場合があります。
ただし、自治体によってはこの制度がないところや、報奨金の金額や対象となる鳥獣が異なることもあります。
住んでいる自治体のホームページで確認するか、担当部署に直接問い合わせて確認しましょう。
たとえば、鳥取県ではイノシシやシカ1頭につき5千円の報奨金が支給されるそうです。
鹿角や猪牙を加工した工芸品・剥製などの販売
どれくらいの需要があり、販路がどれだけあるかは不明ですが、ネット販売・地域のイベントなどを通じて加工品を販売しているところはあります。
ただし、営業努力次第で大きな可能性を秘めた手段だと考えています。
ジビエレストラン経営など飲食店の経営
地域全体で村おこしの一環として活動する場所が増えてきています。
地元で獲れた食材を活用し、猟師も嬉しいと感じる素晴らしい取り組みだと思います。
獲物が獲れた時だけ営業するレストランで料理を提供したり、獲れた肉を卸したり加工品を作ったりするなど、関わり方は自由です。
猟師は未経験でも始められる?
猟師免許は初めての人でも取れますが、お金がかかりますし、以下のような条件も必要です。
知識 動物を守る法律や銃に関する法律、免許の内容、狩りの対象となる動物や道具についての知識が必要です。
技能 狩っていい動物と狩ってはいけない動物を見分けられることや、狩りの道具を正しく使えることが求められます。
適正 視力:銃を使う免許(第一種・第二種)は両目で0.7以上、片目で0.3以上、わなや網を使う免許は両目で0.5以上必要です。 聴力:10メートル離れた場所から出る90デシベルの音が聞こえなければいけません。 運動能力:手足を曲げ伸ばしたり、手を上げたり、指を動かしたりできることが必要です。
更新 3年ごとに更新が必要で、その時は講習を受けなければいけません。更新した免許は申し込んでから10日くらいで届きます。
難易度 合格率は80%ほどで、国家資格の中では比較的取りやすい免許です。
狩猟免許試験への申し込み
1.狩猟免許申請書 | ・住所、氏名、生年月日 ・受験したい狩猟免許の種類 ・猟銃や空気銃の所持許可証の番号及び交付年月日等 |
---|---|
2.猟銃・空気銃許可証の写し (所持許可取得者のみ) |
左記を所持していない方は医師の診断書1枚 ※統合失調症や そううつ病、てんかん、麻薬や覚せい剤の 中毒者でないことを証明するもの |
3.写真 | 申請前6ヶ月以内に撮影した縦3cm×横2.4cmの無帽・正面・上三文身・無背景のもの |
4.狩猟免許申請手数料 (現金または収入印紙) |
免許1種類につき5,200円 ※同時に2種類の免許について申請する場合は1万400円 |
5.返信用封筒 | 都道府県により不要な場合あり |
※1: 狩猟免許を取得する
※2: 狩猟免許申請書 様式
初心者狩猟免許講習会への参加
狩猟免許を取るには、住んでいる都道府県が年に何回か行う狩猟免許試験(※1)に通らなければいけません。
試験は申し込んだ順に人数が決まることが多いので、免許を取ろうと考えている人は、狩猟免許申請書(※2)など必要な書類を早めに準備して申し込むことをお勧めします。
狩猟免許の取得
狩りの方法によって、免許は4つの種類に分かれています。
銃を使う「第一種銃猟免許」(散弾銃とライフル銃用)と「第二種銃猟免許」(空気銃用)、そして「わな猟免許」、「網猟免許」があります。
- 第一種銃猟免許:火薬を使う銃(散弾銃やライフル銃)と空気銃の両方を使って狩りができます。
- 第二種銃猟免許:空気銃だけを使うことができます。
- わな猟免許:銃は使わず、「箱わな」や「くくりわな」といったわなを使って動物を捕まえる免許です。
- 網猟免許:「むそう網」「はり網」「つき網」「なげ網」などの網を使って動物を捕まえる免許です。
銃砲所持許可の取得
銃を持つためには、まず所轄の警察署で行われる「猟銃等講習会(初心者講習)」を受けた後、教習射撃や実技試験を経て銃を購入し、公安委員会に対して所持の許可を申請する必要があります。
この許可は、「1銃1許可制」となっており、1丁ごとに申請が求められます。複数の銃を持つ場合は、それぞれの銃について申請を忘れないようにしましょう。
さらに、許可を受けた銃は、年に1回、警察署に持参して検査を受ける必要があります。
銃を自宅で保管する場合は、専用の「ガンロッカー」が必要で、実包を保管するためには別に「装弾ロッカー」を用意する必要もあります。
猟具を準備する
鳥や獣を捕まえるには、猟具が必要です。
使う猟具については鳥獣保護管理法や銃砲刀剣類所持等取締法でそれぞれ決まりがあり、異なる手続きが必要なので注意が必要です。
捕獲の方法は猟具によって異なり、「わな猟」「網猟」「銃器(装薬銃・空気銃)」の3つに分類されています。
わな猟
くくりわな
脚にワイヤーの輪をかけて捕まえる代表的な猟具。バネ式、はねあげ式、ひきずり式の3種類があり、シカやイノシシの捕獲に使用しますが、ツキノワグマやヒグマへの使用は禁止されています。
はこわな
箱の中にエサを置き、動物をおびき寄せて捕まえる方法です。大型のものはイノシシやシカ用、小型のものはタヌキやアライグマ用に使われます。
はこおとし
獲物が箱に入ると、重りのついた天井が落ちて動きを封じる方法で、タイワンリスやイタチなどに使用されます。
囲いわな
はこわなと同様にエサで誘導し、獲物が入ると入口が閉まる仕組みです。シカやイノシシの捕獲に使います。
網猟
むそう網
鳥の群れをエサで引き寄せ、一斉に捕まえる網で、カモやハト、スズメなどに使われます。
はり網
空中に網を張り、人が見張りながら獲物を捕える方法で、鳥やウサギなどの捕獲に用いられます。
つき網
虫取り網のような形をしており、草むらや池の周りにいる鳥を捕らえます。タシギなどに使用します。
なげ網
飛んでいる鳥に向かって網を投げる方法で、カモなどの捕獲に用います。
銃器(装薬銃・空気銃)
装薬銃
火薬を使って弾丸を発射する銃器のことで、散弾銃とライフル銃があります。鳥や小動物には散弾銃、シカやイノシシ、クマなどの大型動物にはライフル銃を使用します。
空気銃
空気やガスの圧力で発射する銃器で、殺傷力があるため使用には許可が必要です。主に鳥や小動物の捕獲に用いられます。
※1:環境省HP 猟具(猟銃、わな、網)を所持する
※2:環境省HP 狩猟制度の概要 || 野生鳥獣の保護及び管理
猟師を始める際に気を付けること
猟師の副業は、獣害駆除などで社会貢献ができる一方、いくつかのリスクや確認事項があります。
ここでは、特に注意すべき3点について説明します。
怪我や負傷のリスク
狩猟は野生動物と直接対峙するため、追い詰められたシカやイノシシが突進してきて、命を落としたり重傷を負う事故が全国で発生しています。
さらに、狩猟には銃の使用が不可欠ですが、取り扱いを誤ると暴発や、獲物と間違って人に当たるといった深刻な事故にもつながる可能性があります。
また、強力なバネを使用したくくりわなは、獲物の脚を一瞬で押さえるため、設置時に跳ね返りで骨折したり、切れたワイヤーが目に当たって失明する事故もあるため、扱いには十分な注意が必要です。
地域の狩猟実績の確認
副業として収入を得るには、鳥獣を捕獲できる環境があることが前提です。
自治体から捕獲許可を得るには、地域の鳥獣被害対策実施隊に参加する必要があり、活動地域によっては捕獲数や狩猟期間、報酬などが異なります。
狩猟には一般的に3年ほどの実績が必要とされるため、活動する地域の条件や実績も事前に確認しておきましょう。
なお、鳥獣被害対策実施隊に所属していると、以下のような優遇措置が受けられる場合もあるため、加入がおすすめです。
- 技能講習の免除
- 狩猟税の軽減
- 公務災害の適用
- 活動経費の特別交付税措置
- ライフル銃所持許可の特例
解体所の持ち込み条件
捕獲した動物をジビエとして流通させるには、解体所(食肉処理施設)での処理が必要であり、鮮度を保つためにもできるだけ早く持ち込む必要があります。
解体所に持ち込む際には、次のような条件が求められる場合があるので、事前に確認しておくことが大切です。
- 搬入前に搬入予定時刻を連絡する
- 獲物は1頭ずつシートなどで包み、周囲を汚さないようにする
- 運搬車両の荷台は使用前後に洗浄する
- 捕獲後、制限時間内に解体所へ搬入する
- 捕獲から搬入までの間に、狩猟者の情報や健康状態、狩猟方法、被弾部位などを記録し、処理業者へ伝える
猟師の求人情報
狩りをする人の高齢化が進み、次の世代を担う人が少なくなっています。
また、野生動物による農業や林業への被害、人への危害も全国で大きな問題になっています。
そのため、地域によっては一般的な求人サイトや地域の会社のウェブサイトで猟師を募集しています。
最近では、「地域おこし協力隊」として田舎に移り住み、経験がなくても猟師になる若い人も出てきています。
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新潟県粟島で鹿を捕まえる仕事をやってくれる人を探してます。
君も専業猟師になろう!#狩猟#有害#求人#鹿そしていつものタグ作戦 pic.twitter.com/jtRP4yN47Y
— 藤野河童@岩見沢猟師 (@fujinokappa) February 24, 2022
猟師に向いている人
自然が好きな人
猟師は自然環境の中で多くの時間を過ごすため、自然が好きなことが大切です。自然の中で働くことに喜びを感じる人に向いています。
体力に自信がある人
猟師の仕事は体力を要するため、体力に自信がある人に向いています。山や森での移動や重い装備の運搬など、体力を使う作業が多いです。
コツコツと努力できる人
狩猟は地道な努力が必要な仕事です。コツコツと作業を続ける忍耐力があり、計画的に進められる人に向いています。
環境保護に興味がある人
猟師は環境保護や持続可能な農業に貢献します。環境保護に関心があり、持続可能な農業を目指す人に向いています。
コミュニケーションが得意な人
猟師は地域社会や消費者と関わることが多い仕事です。コミュニケーションが得意で、地域の人々や消費者と良好な関係を築ける人に向いています。
猟師の将来は?
野生動物への対策として、また山や森の自然を守るために、動物の数を適切に保つ必要があり、猟師の需要は増え続けています。
最近は野生動物の肉が人気になってきたことや、狩りから食品加工、販売までを一貫して行う取り組みが広がっていることから、これからは猟師の仕事はさらに幅広く、収入を得る方法も増えていくと考えられています。
猟師の副業で稼ぐためのコツは?
地域の狩猟実績を確認する
猟師として収入を得るには、狩猟する地域で鳥獣が十分に捕れることが重要です。
地域によって捕獲数や狩猟可能な期間、報酬金額が異なるため、狩猟をする場所の実績を事前に確認しておきましょう。
地域の鳥獣被害対策実施隊の加入条件を確認する
鳥獣被害対策実施隊に加入すると、次のような優遇措置が受けられます。
- 技能講習の免除
- 狩猟税の軽減
- 公務災害の適用
- 活動経費の特別交付税措置
- ライフル銃所持許可の特例
また、報酬を得るために実施隊への加入が必要な場合も多く、地域によって報酬や税軽減の割合、加入条件が異なります。
収入を増やすためにも加入を検討し、活動地域の鳥獣被害対策実施隊の条件を確認しておきましょう。
解体所への持ち込み条件を確認する
捕獲した鳥獣を個人で販売するには、食肉処理業や食肉販売業の許可が必要で、無許可の場合は食品衛生法に違反してしまいます。
そのため、まずは解体所に持ち込んで販売するのが一般的です。
ただし、解体所の受け入れには条件がある場合が多いため、確認が必要です。
たとえば、被弾部位によって受け入れ可否が異なり、頭部や首への被弾は受け入れやすいものの、胸部への被弾は断られることがあります。
また、捕獲から搬入までの制限時間が設定されている場合もあります。
まとめ
猟師としての生活や収益化の方法についてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか?
全国的に猟師の数は高齢化に伴い減少していますが、若い世代による新たな狩猟ブームの兆しも見られます。皆さんも趣味や仕事として、狩猟の世界に一歩踏み出してみませんか?
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