本記事では、診療放射線技師を目指す方や診療放射線技師として働きながら、給料アップやキャリアアップを目指している方に向けて給与相場や、地域や勤務場所別による給料の違いを解説します。
診療放射線技師とは
まずは、診療放射線技師の仕事について紹介します。
そもそも診療放射線技師ってどんな仕事?
主に病院などの医療機関で働き、医師の指示のもとレントゲン検査やCT検査、MRI検査を行う医療技術職です。
名前の通り放射線を取り扱う仕事で、放射線検査ができるのは医師と放射線技師のみと言われており、専門職のため職に就くためにはいくつかの条件があります。
診療放射線技師になるには?
第一に、診療放射線技師になるには国家試験に合格しなければなりません。
さらに、国家試験を受けるにあたっても、いくつか条件があります。
条件1.文部科学大臣・厚生労働大臣・都道府県知事が指定する学校
条件2.診療放射線技師免許の取得可能な学部・学科がある
上記に当てはまる大学・短大・専門学校(養成所)のいずれかに
「4年または3年以上在籍」し、所定の単位を取得した人が、受験資格を得ることができます。
つまり診療放射線技師とは、条件に当てはまる学校へ入学し、さらに国家試験に合格しなければなれない難易度の高い職種なのです。
診療放射線技師の平均給料は?
さて、ここからが本題です。
狭き門を通り抜け、晴れて診療放射線技師に就いたら収入が気になる人も多いのではないでしょうか。
厚生労働省が発表している「令和3年賃金構造基本統計調査」の統計データによると、診療放射線技師の平均年収は約547万円です。
また、この調査における診療放射線技師の平均年齢は41.9歳、平均月収は約37.2万円で、平均賞与は約99.8万円でした。
出展:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
他の医療系資格(医師を除く)の平均年収と比べてみると、
診療放射線技師 | 約547万円 |
薬剤師 | 約581万円 |
看護師 | 約499万円 |
臨床検査技師 | 約496万円 |
臨床工学技士 | 約423万円 |
この表を見ての通り、診療放射線技師は医療系資格の中でも平均年収は高い水準と言えます。
なぜ他の医療系資格の仕事と比べて年収が高いかというと、レントゲン検査やCT検査、MRI検査など放射線を扱うことができるのが医師と診療放射線技師のみだからです。同じ医療現場で働く職種の中でも、誰でもできる仕事ではないからこそ平均年収も高くなるのでしょう。
出展:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
【就業形態別】診療放射線技師の年収調査
続いて正社員、アルバイトやパート、そして契約社員の就業形態別に年収を紹介します。
就業形態によって勤務時間も異なるので、自分に合った働き方を模索中の方は参考にしてみてください。
就業形態① 正社員として働いたときの年収
正社員として働く診療放射線技師の年収は、約547万円です。
そのうち賞与は約99.8万円で、賞与を含まない月収は約37.2万円です。
出展:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
先ほどご紹介した通り、高い水準の収入なので、魅力に感じる人も多いと思います。
正社員が他の就業形態に比べて年収や賞与が高くなるのには理由があります。
この記事を読んでいる皆さんも想像がつくかもしれませんが、正社員とは雇用期間を定めずに雇用主と労働契約を結ぶ就業形態で、アルバイトやパートに比べて業務内容も幅広くなります。
例えば検査や治療以外にも、新人教育や事故防止の対策案を考えたり、役職に就く場合もあり、重要な業務をこなす機会も増えます。
業績を上げる義務や社会貢献の義務、後進を育てる義務など、様々な義務が課せられるため、他の就業形態と収入の差が生まれるのでしょう。
就業形態② アルバイトやパートとして働いたときの年収
アルバイトやパートとして働く場合は時給制のため、勤務場所によって異なります。
厚生労働省のデータによるとアルバイトやパートとして働く診療放射線技師の時給は3,074円、賞与は約10.5万円です。
出展:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
実労働日数や実働時間は人それぞれですが、実労働日数を10日、1日の所定内実働時間を約5.5時間とした場合の平均月収は169,070円で平均年収は約2,028,840円となります。
結婚や出産を機に、正社員からアルバイト・パートに変わったとしても十分な収入が得られるため、生活スタイルが変わっても安定した収入を得やすいのが診療放射線技師の良い点でもあります。
また、アルバイトやパートは正社員と違って雇用期間を定めて働く就業形態で、短時間勤務ができ、求人サイトには「週2~3日程度の勤務もOK」としている職場もあるため、保育園や幼稚園に子供を預けている方にとっては仕事とプライベートの両立がしやすい就業形態とも言えるでしょう。
就業形態③ 契約社員として働いたときの年収
契約社員として働く診療放射線技師の年収は約300万~350万円です。
出展:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
契約社員はアルバイトやパートと同様に雇用期間を定めて働く就業形態ですが、1つ違うところを挙げるとすれば勤務時間や業務内容は正社員と似ているというところです。
とはいえ、正社員と契約社員では年収の差もでてくるため、契約社員で働くメリット・デメリットを理解した上で働くと良いでしょう。
参照:契約社員のメリット・デメリット
診療放射線技師は男女で年収が違う
男性技師は約564万円、女性技師は約478万円という男性技師のほうが約86万円年収が高いという結果となりました。
なぜ男性技師のほうが年収が高いのか
夜勤のある医療機関では、体力のある男性のほうが夜勤を任され、その分夜勤手当が支給されます。
また、勤務年数が長くなればなるほど昇給で年収が高くなります。
どうしても女性の場合、産休や育休、子育てによる時短勤務により長期勤務が難しくなる人が多くなるため、そういった面も含めて女性技師よりも男性技師のほうが年収が高くなると言われています。
出典:診療放射線技師JOB https://rtjob.jp/about_rt/salary/
【地域別】診療放射線技師の年収
次に同じ診療放射線技師という職種でも、地域や勤務場所によって年収が違ってきます。
特に関東地域は全体的に年収の水準が高く、診療放射線技師の平均年収である約547万円を上回っている地域が多かったです。
さらに平均年収を大きく上回る年収600万超えは、宮城県の約656万円・愛知県の約606万円・青森県の約600万円、そして47都道府県の中で最も高い年収を得ているところは、香川県の約665万円でした。
診療放射線技師の平均年収を100万円以上上回るという結果です。
反対に九州・沖縄地方は全国平均の約547万円を上回る県は1つもなく、半数以上が400万円台でした。
出展:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
もちろん、あくまで平均年収なので保持している資格や勤務場所によっても年収は異なりますが、少しでも多くの年収を得たい方は、全国平均の約547万円を上回る県で就職を検討すると良いでしょう。
【勤務場所別】診療放射線技師の年収
診療放射線技師は、どのような施設や企業で働くかによっても収入が異なります。
ここからは、勤務場所別の収入や職場環境についてご紹介します。
大学病院
大学病院の診療放射線技師の平均年収は、約400万~600万円で、大学病院は比較的給料の高い勤務場所です。
ただ、他の勤務場所に比べると担当業務が細かく振り分けられており、担当分野に限りがある場合や学会発表に向けての研究や準備で残業が多くなる可能性がある職場です。
検査業務以外にも様々な業務を行いたい方やとにかく収入を上げたい方には最適な職場だと言えます。
国立・公立病院
国立・公立病院での診療放射線技師の平均年収は約400万~450万円。
これは診療放射線技師の平均年収を少し下回る数字です。
しかし、国立・公立病院で働く場合、公務員扱いになるというメリットがあります。
福利厚生もきちんと得られ、教育体制も充実しているため将来の安定性や今後のキャリアアップを目指している人には最適な職場と言えるでしょう。
大学病院も国立・公立病院もいずれも大規模な施設のため、最新医療機器の導入もあり、様々な症例の対応もできるため、スキルアップがしやすい職場環境です。
診療放射線技師としてステップアップを目指す際に有利ともいわれているため、就職先として人気が高く、競争率が高い傾向にあります。
民間病院
民間病院の診療放射線技師の平均年収は約370万~450万円です。
ただ、民間病院は規模が様々なので、就職する病院によって収入の差があります。
大きな病院のほうが給与が高いと思われがちですが、すべての病院がそういったわけではありません。
残業の頻度によっても給与に差が出てくるため、就職先を探す際は求人情報を確認すると良いでしょう。
クリニック・健診センター
クリニック・健診センターの診療放射線技師の平均年収は約350万~400万円です。
平均年収よりも少し低い水準ですが、その分夜勤がないため日中に働きたい方には最適な職場と言えるでしょう。
また、クリニックや健診センターは賞与が低めに設定されているだけであって、月収自体が低いわけではないので家事や育児との両立もしやすく、収入も安定しているという点では働きやすい環境です。
診療放射線技師が1人だけの職場は担う業務が増え、責任も大きくなるため給与設定が高く、平均年収は約380万~450万円となっています。
医療機器メーカー
診療放射線技師の資格があれば、専門知識を活かして医療機器メーカーで働くという選択肢もあります。
その場合は、多くの人が「アプリケーションスペシャリスト」という職種に就きます。
アプリケーションスペシャリストとは、様々な医療機器に関する知識や使用方法を熟知し、医療機関にてその機器の説明や、操作について説明を行うことを主としている仕事です。
アプリケーションスペシャリストで働く場合の平均年収は約400万~500万円で、他の職場に比べて給与が高くなります。
その理由は、住宅手当や残業代以外にも、出張が多い職場のため出張手当も支給されるからです。
外資系の企業の場合は高いところで年収が700万円を上回る場合もあります。
ただその分、残業や出張で大変なので専門知識だけでなく体力も必要になる職場でしょう。
治験業界
医療機器メーカーと同様に、診療放射線技師の専門知識を活かして治験コーディネーターとして働くこともできます。
平均年収は約300万~400万円。
月の給料と賞与が3~4か月分の高い設定のため、住宅手当などは少ないと言われています。
しかし、2年勤務後に取得できる「CRC認定資格」を取得すると、資格手当が月2~3万円ほどつき、年収は約24万~36万円ほど上がります。
診療放射線技師の年収アップ術
「さらに年収をあげたい」そんな思いを日々抱えて働いている人も多いのではないでしょうか。
ここからは、比較的年収の高い診療放射線技師の年収をさらにアップさせる方法を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
方法① 管理職を目指す
まず1つ目は、今の職場で管理職を目指すことです。昇給+役職手当で給与が高くなる傾向があります。
管理職のポジションは、長年勤めた診療放射線技師が務めるケースが多いため管理職を目指すなら長く勤務することが大事になります。
方法② 給与の高い職場に転職する
今の職場に対して、働き方や給与面など不満がある場合は転職をすることもひとつの手段です。
注意点は、「年収だけを見て決めないこと」です。
職場によって勤務時間や環境が大きく異なるため、慣れない働き方に苦労する可能性があります。
また「給与交渉」を行うことができる点も、転職ならではです。直接交渉の仕方が分からない、また直接言いにくい場合は、プロのコンサルタントに依頼し交渉してもらうこともできます。
転職をする際は、業務内容や待遇など年収以外のポイントもしっかり確認し、時にはプロの力も借りた上でベストな職場選びを行いましょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。
診療放射線技師といっても、働く地域や勤務場所によっても収入が大きく異なります。
診療放射線技師の求人を調べる際は、自分にあった仕事内容であるか無理せず働くことができる勤務形態や待遇であるかを把握した上で、就職活動を行いましょう。
コメント